労務Q&A

本センターでは、医療労務管理アドバイザー作成の「労務管理実務Q&A」を順次アップして参ります。医療機関の勤務環境改善に向けた取組みの推進にお役立てください。(Q.をクリックすると回答のA.が下部に表示されます。)

②就業規則・給与制度・人事制度4. 労働条件等に関すること

2021.9.29就業規則の周知義務について教えてください。

就業規則は作成しただけでは法的な効果が発生せず、職員へ周知して効果が発生します。この就業規則の周知については、労働基準法第106条において「使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、職員に周知させなければならない」と定められており事業主の義務となっています。
また、この周知義務については、就業規則を新しく作成した場合だけではなく、都度内容を変更した場合においても、変更後の内容を職員に周知させなければならないものとされています。
周知については、次のような方法です。
〇事業所の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること
〇書面を職員へ交付すること。
〇PC等の機器にデジタルデータとして記録し、職員がいつでも見れるようにすること。

2021.8.25採用内定者に事前研修を行うことは可能ですか

採用内定の法律的考え方に、採用内定による労働契約の成立が入職日とする考え方と、採用内定時点で労働契約の効力が生じるとする考え方があるとされます。前者の場合は、内定期間中は業務命令による研修の参加は命じられませんが、後者の場合は、命じることができると考えられています。
実務的には、採用内定時に入職日までに事前研修がある旨伝え、同意を得ておくことをお勧めします。
上記同意が得られなかった場合は、研修を受けなかったことを理由としての内定取消しはできませんが。同意があった場合でも、学業等の理由により参加できなかったといった合理的な理由があった場合は不参加を理由としての内定の取り消しは難しいと言えます。
また、その研修が、「労働」に該当するといえる場合は、賃金の支払いも考慮しておく必要があります。

2021.8.18採用にあたり試用期間はどの位が適切ですか、また、期間の延長はできますか

試用期間の長さに法律の規制はありませんが、3ケ月ないし6ヶ月としている企業が多いようです。これは、試用期間とは使用者が解約する権利を保留した「解約権留保付労働契約」という考え方が一般的で、契約上、本採用後と比べて不安定な状態に置かれる労働者を保護する必要から、この長さが、あまりに長いと争いになる場合があります。
期間は、就業規則等に定められていても、著しく長いと判断されると公序良俗に違反するとして無効となる場合もあります。
よって、試用期間が、適格性を判断する十分な期間を設けるという観点から、業務内容、必要な経験等を考慮して合理的な期間設定をする必要があります。
上記試用期間中に適格性の判断ができなかった場合は、試用期間の延長はできるかということになりますが、その場合、就業規則等に延長の根拠が定められていることが必要であり、さらに、試用期間を延長する合理的な理由が必要とされます。

2021.7.16賞与は支給日に在籍していることとすることはできますか

就業規則や賃金規程に明記された、賞与の支給対象期間に在職していたが、支給日までに退職している職員には支給しないとすることは可能かとのケースです。
賞与は、過去の一定期間の労務に対する功労褒章的な意味合いと、将来の労働に対する意欲向上や就労の確保といった意味合いを持ちます。
この過去の就労に対して支払わないことが公序良俗違反にならないか、また、退職の自由を制限することとならないかといった問題が考えられます。
前述した賞与の性格が将来の労働への意欲向上や就労の確保といった性格から考えると、在籍条件も合理性があると言えます。また、在籍要件自体が退職を制限しているとまでは言えません。但し、査定退職期間から相当の期間後の支給であったり、本来の支給日が遅延した場合は支給を拒めない可能性が高い思われます。
最近の判例でも、支給日在籍条件は一定の合理性を認め有効とするようになっています。

2021.7.1新たに有期雇用契約を結びます、「更新回数は4回を限度とする」といった契約で雇止めはできますか

有期雇用労働者の無期転換制度が決まってからは、特に更新上限条項についての質問が多くなりました。
ただ単に、契約書に更新上限条項があるだけでは、雇止めができるとは言えません。
有期契約労働者が更新上限条項に関して説明を受け、その内容を理解し、自由な意思で有期労働契約を締結した場合には、更新上限を超えての合理的な期待が生じないとして、雇止めを可能とする傾向にあります。
具体的には、更新上限までの契約の都度、契約書を取り交わし、更新手続きをキチンと行います。その際、更新上限を超えて継続雇用を示唆するような言動は避け、同じ契約内容の労働者も同じように運用を厳密に行い、対象労働者に合理的期待を生じさせないようにすることが必要です。

2021.5.18配置転換を行う場合の留意点について教えてください。

 職務内容や勤務地を、相当の期間にわたって変更することを配置転換(以下、配転という)といい、勤務地の変更を伴う配転を特に転勤といいます。
 使用者が配転を命じるには、労働協約や就業規則によって配転命令権が労働契約上根拠づけられている必要があります。就業規則に配転を命じ得る旨の包括的規定があり、しかもその規定が形骸化しておらず実態として配転が広く行われている場合には、使用者の配転命令権が肯定されると考えられます(労契法7条)。
 ただし、当該労働者について勤務場所を限定する特約が存在する場合にはそちらが優先し(同条但し書き)、その限定範囲を超える転勤には労働者の個別的同意が必要ということになります。そのような勤務地限定の合意・特約は、採用時のほか、採用後にも成立し得ると考えられます。
 本採用の大卒正社員のように、当該企業で長期的にキャリアを形成していく雇用の場合には、勤務地限定同意が認定されにくい傾向にあります(東亜ペイント事件 最二小判昭61.7.14)が、現地採用の労働者(新日本製鐵事件 福岡地小倉支決昭45.10.26)や、採用面接で転勤には応じられない旨を明確に述べ、そのことについて本社から何の留保もなく採用された労働者(新日本通信事件 大阪地判平9.3.24)など、勤務地限定合意が認定される例もあります。
 なお、使用者に配転命令権が認められる場合でも、①配転命令に業務上の必要性が存しない場合(NTT西日本(大阪・名古屋配転)事件 大阪高判平21.1.15)、②配転命令が不当な動機・目的に基づく場合(フジシール事件 大阪地判平12.8.28)、③労働者に通常甘受すべき程度を超える不利益を及ぼす場合(日本電気事件 東京地判昭43.8.31)には、配転命令は権利濫用として無効になります(労契法3条5項)。
 業務上の必要性は、当該配転が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性には限定されず、労働力の適正配置、業務の能率促進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められれば肯定されると考えられます(東亜ペイント事件 最二小判昭61.7.14)。
 また、平成13年に育児介護休業法が改正され、子の養育または家族の介護状況に関する使用者の配慮義務が導入された(法26条)ほか、平成19年制定の労契法でも使用者が仕事と生活の調和に配慮すべきことが規定されている(法3条3項)ことから、近年の裁判例では、配転命令の権利濫用の判断においてこれらの規定を参照し、労働者の私生活上の不利益をより慎重に検討しているものもあります(明治図書出版事件 東京地決平14.12.27)。

2021.4.1年俸制の対象者にも時間外手当は必要ですか

労働基準法は第37条により割増賃金の支払い義務を定め、例外として第41条に管理監督者等の適用除外を受ける者を決めていますが、この41条該当者以外の職員で年俸制の対象者が法定の時間外労働や休日労働、深夜労働を行った場合は、割増賃金を支払わねばなりません。
では、「年俸制の金額には残業代等を含むものとする」と定めることで問題はないでしょうか。この場合、年俸制の金額の中に、割増賃金がいくら入り、何時間分に該当するかが明確になっていなくてはなりません。また、その設定された時間・金額を超えた場合は、不足分は別途支給する必要があります。

2021.2.12退職者への賃金・退職金の支払い時期について教えてください

退職者の金品の返還とその時期については、労基法23条1項において、「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。」と決めています。
これは、迅速に変換しないことが、労働者の足止め策に利用されたり、労働者の生活の困窮をさせない為に早期返還を命じたものです。
実務上、賃金と退職金では取扱いが異なります。
賃金の場合、賃金規程に支払日が決まっていたとしても、上記趣旨から、退職した労働者が請求した日から7日以内に支払う義務があります。
退職金の場合、行政解釈では、通常の賃金と異なり、あらかじめ就業規則等で定められた支払い時期に支払えば足りると解されています。よって退職金の場合は、7日以内に支払う必要はありません。

2021.2.10就業規則の届出に労働組合又は労働者代表の意見の提出がありますが、それは反対する意見であっても届け出は可能ですか

「労基法は法90条において、『労働組合の意見を聴かなければならない』としていますが、労働組合との協議決定を要求するものではなく、当該就業規則についての労働組合の意見を聴けば、法違反とならない趣旨である」と行政解釈上されています。
全く意見に聞く耳を持たず、誠実に意見を聴取したと言えない場合は、その後の労使関係に問題が生じることも考えられますが、労使の合意に基づく労働協約とは異なり、就業規則はその作成が使用者に課されているもので、その内容についても使用者の判断により決定されるものです。
よって、採用することのできない反対意見でであっても意見書として届け出ることは可能です。

2020.12.9長期の労働契約を結ぶ場合の注意点について教えてください

労基法では、労働契約の期間については、原則として3年を超えてはならないとしていますが、次の2種類の労働契約については5年としています。(労基法14条)
(1)専門的な知識、技術又は経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識を有する労働者との間に締結される労働契約
  具体的に医療関係としては、⓵博士の学位を有する者 ⓶医師 ⓷歯科医師 ⓸薬剤師など
(2)満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約
  この場合、高度専門知識等の制約がないので、一般業務従事者でも5年契約を結ぶことも、更新することも可能です。
なお、長期契約は、長く働いてもらえる長所がありますが、反面、定めた雇用期間中の雇用責任があり、途中解雇の場合は、期間の定めのない契約における解雇権乱用法理より制約が厳しいものとなることに注意が必要です。

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