鹿児島県医療勤務環境改善センター

医療機関の管理者の皆様へ
医療機関の働きやすい環境に向けた勤務環境改善のために当センターをご活用ください 

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労務Q&A

本センターでは、医療労務管理アドバイザー作成の「労務管理実務Q&A」を順次アップして参ります。医療機関の勤務環境改善に向けた取組みの推進にお役立てください。(Q.をクリックすると回答のA.が下部に表示されます。)

5. 働き方改革に関すること① 時間外労働の上限規制

2021.12.272024年4月から医師にも時間外労働の上限規制が適用されますが、月の労働時間の限度100時間未満(例外あり)といったときの「(例外あり)」とは、何を指すのでしょうか。

患者数の急増等により、臨時的にやむを得ずある月の医療ニーズが多くなった場合等に「面接指導」「就業上の措置」を講ずることを条件に、例外として月100時間以上の時間外・休日労働を認めるというものです。
36協定において面接指導を行うこと等を定めた場合には、月100時間以上の時間外・休日労働をすることも可能ですが、原則はあくまでも月100時間未満ですので、先ずは時短に取り組んでいただくようお願いいたします。

2020.12.8時間外労働の上限規制について教えてください。

 長時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭家庭参加を阻む原因となっています。
 長時間労働を是正することによって、ワークライフバランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の向上に結び付きます。
 このため、働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできません。また月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月までです。
 臨時的な特別の事情があり労使が合意する場合は、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働を併せて月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする必要があります。
 医師や建設事業等は、2024年4月1日以降の適用となり、猶予されています。医師については、今後省令で定めることとされています。
 したがって、36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合には、労働基準法32条違反となります。(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)また、36協定に定めた時間数にかかわらず、上限の時間を超えた場合には、労働基準法36条第6項違反となります。(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)よって、時間外労働を行わせるためには、36協定の締結・届出及び労働時間の把握が必要であり、適正に管理する責務が求められます。

3. 職場の環境整備に関すること①いじめ・ハラスメント等

2021.7.27たとえば、どのような言動がパワハラにあたりますか?

パワハラ防止指針では、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づいて次の6つの行為類型がパワハラの典型例として整理されており、さらにその行為類型ごとに、パワハラに該当すると考えられる例、該当しないと考えられる例が挙げられています。
個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、ここに挙げられた例は限定列挙ではないことに十分留意して、職場におけるパワハラに該当するか微妙なものも含めて広く相談に対応するなど、適切な対応を行うことが必要です。
※ 例は、優越的な関係を背景として行われたものであることが前提です。

(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 殴打、足蹴りを行うこと。
 ② 相手に物を投げつけること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 誤ってぶつかること。

(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
 ② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
 ③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
 ④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。
 ② その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。

(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
 ② 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。
 ② 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。

(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
 ② 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
 ③ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。
 ② 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。

(5)過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
 ② 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。

(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
 ② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
 ② 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。
 この点、プライバシー保護の観点から、(6)(イ)②のように機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要です。

2021.7.9介護現場における(利用者・家族等による)ハラスメント対策について教えてください

・近年、介護現場では、利用者や家族等による介護職員への身体的暴力や精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどが少なからず発生していることが様々な調査で明らかとなっています。
・施設・事業所に勤務する職員のうち、利用者や家族等から、身体的暴力や精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどのハラスメントを受けた経験のある職員は、サービス種別により違いはあるものの、利用者からでは4~7割、家族等からでは1~3割になっています。ハラスメントを受けたことにより、けがや病気になった職員は1~2割、仕事を辞めたいと思ったことのある職員は、2~4割となっています。
・事業者(事業主)は、労働契約法に定められる職員(労働者)に対する安全配慮義務等があることから、その責務として利用者・家族等からのハラスメントに対応する必要があります。ハラスメント対策は介護職員を守るだけでなく、利用者にとっても介護サービスの継続的で円滑な利用にも繋がる重要な対策です。
・ハラスメントは、利用者や家族等の環境や生活歴、職員と利用者・家族等との相性など様々な要素が絡み合うことがあり、一律の方法では適切に対応できないケースもあります。ハラスメントが発生した場面、対応経過等について、できるだけ正確に事実を捉えた上で、事業所全体でよく議論し、ケースに沿った対策を立てていくことが重要となります。
・厚労省の「介護現場におけるハラスメント対策」のサイトに、ハラスメントの実態を伝え、取り組むべき対策などを示したマニュアルや研修の手引き・動画や事例集が公開されています。事業所が具体的に取り組むべきこと、利用者・家族等に対する周知のポイント、相談しやすい職場づくり、発生時後の各対応、職員・管理者別の取組み方など、参考となる詳しい情報や手引きツールがありますのでご活用ください。

2021.2.22事業主が、職場におけるパワーハラスメントを防止するために講ずべき措置について教えてください。

 令和2年6月から、雇用管理上の必要な措置を講ずることが義務(中小医療機関等については令和4年3月までは努力義務)となりましたが、まず、事業主の方針の明確化及びその周知・啓発として、パワーハラスメントの内容、及びパワーハラスメントを⾏ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが必要です。また、パワーハラスメントの⾏為者については厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することも必要です。
 次に、相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備として、相談窓⼝をあらかじめ定めて労働者に周知すること、相談窓⼝担当者が内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること、パワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく発生のおそれがある場合やパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても広く相談に対応することが必要です。
 さらに、職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応として、事実関係を迅速かつ正確に確認すること、事実関係の確認ができた場合には速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に⾏うこと、事実関係の確認ができた場合には⾏為者に対する措置を適正に⾏うこと、再発防止に向けた措置を講ずることが必要です。
 そして、併せて講ずべき措置として、相談者・⾏為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じて労働者に周知することが必要なほか、事業主に相談したこと、事実関係の確認に協⼒したこと、都道府県労働局の援助制度を利⽤したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定めて労働者に周知・啓発することが必要です。
 なお、以上のほかに、望ましい取組もあります。
 こちらのパンフレットが参考になります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

2021.1.26職場におけるパワーハラスメントの定義について教えてください。

 職場における「パワーハラスメント」とは、職場において行われる① 優越的な関係を背景とした言動であって、② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③ 労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素を全て満たすものをいいます。
 客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、②の要素を満たさないため、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
 「職場」とは、事業主が雇⽤する労働者が業務を遂⾏する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂⾏する場所であれば「職場」に含まれます。勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延⻑と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して個別に⾏う必要があります。
 「労働者」とは、いわゆる正規雇⽤労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇⽤労働者を含む、事業主が雇⽤する全ての労働者をいいます。また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇⽤する労働者と同様に、措置を講ずる必要があります。
 ①「優越的な関係を背景とした」⾔動とは、業務を遂⾏するに当たって、当該言動を受ける労働者が⾏為者とされる者(以下「⾏為者」という。)に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が⾼い関係を背景として⾏われるものを指します。
 ②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」⾔動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、⼜はその態様が相当でないものを指します。
 この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題⾏動の有無や内容・程度を含む当該言動が⾏われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性((例)経験年数や年齢、障害がある、外国⼈である 等)や心⾝の状況((例)精神的⼜は⾝体的な状況や疾患の有無 等)、⾏為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当です。
 また、その際には、個別の事案における労働者の⾏動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要です。なお、労働者に問題⾏動があった場合であっても、⼈格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、当然職場におけるパワーハラスメントに当たり得ます。
 ③「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により、労働者が⾝体的⼜は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったために能⼒の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
 この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会⼀般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当です。
 なお、言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い⾝体的⼜は精神的苦痛を与える態様の言動の場合には、1回でも就業環境を害する場合があり得ます。
 職場におけるパワーハラスメントは、①から③までの要素を全て満たすものをいい、個別の事案について職場におけるパワーハラスメントの該当性を判断するに当たっては、②で総合的に考慮する事項のほか、当該言動により労働者が受ける⾝体的⼜は精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要です。
 このため、個別の事案の判断に際しては、相談窓⼝の担当者等がこうした事項に⼗分留意し、相談を行った労働者(以下「相談者」という。)の心⾝の状況や当該言動が⾏われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、相談者及び⾏為者の双方から丁寧に事実確認等を⾏うことも重要です。
 これらのことを⼗分踏まえて、予防から再発防止に⾄る⼀連の措置を適切に講じることが必要です。
 こちらのパンフレットが参考になります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

2020.10.8パワハラ防止法について教えてください。

 法律において初めてパワハラが規定されました「改正労働施策総合推進法」。パワーハラスメント防止を企業に義務付けることが決まり、令和2年6月から、雇用管理上の必要な措置を講ずることが義務となります。中小医療機関については令和4年4月からとなり、それまでは努力義務となります。特に罰則は定義されていませんが、必要に応じて事業主に対して助言・指導・勧告が行われ、それに従わない場合は企業名が公表される可能性がありますので注意が必要です。
 パワハラは、いくつか発生してしまう要因が存在し(加害者側・被害者側)、防止するためには様々な取り組みのポイントがあります。院長等のトップからのメッセージ、就業規則や社内規定に文書で示し周知を行い、相談窓口を設置・紹介してアンケート等を実施、教育のための研修などといった取り組みが必要です。医療勤務環境改善支援センターでは具体的な取組みを進めるための助言・派遣指導も行っておりますのでご活用ください。

2020.9.17いじめやハラスメント、職員間暴力を防ぐためには、職場でのコミュニケーションを活性化させることが大切だと考えますが、そのための取組みとして、フィッシュ哲学を取り入れている病院があると聞きました。それについて簡単に教えてください。

フィッシュ哲学とは、①遊び心を取り入れる、②人を喜ばせる、楽しませる、③相手に注意を向ける、④態度を選ぶ、の4つの原理をもつ概念です。アメリカのシアトルにある魚市場発祥の概念であることから「フィッシュ哲学」と称されました。
フィッシュ哲学の概念を看護現場に取り入れた結果、離職率の低下、新人看護師の定着率の向上、職務満足度の向上、患者苦情相談件数の減少、職場内のコミュニケーションの活性化、人間関係が良好になったことが報告されています。
職場が活気にあふれるような遊び心を取り入れ、同僚等に対してエネルギッシュな楽しい雰囲気で接し、人が自分を必要としている瞬間を逃さぬように気を配り、ポジティブな姿勢で出勤するようにすることが、イキのいい職場へのコツのようです。
パワーハラスメント防止対策の法制化・パワーハラスメント防止措置等の実施義務の創設等の法改正(令和2年6月1日施行(中小医療機関等については令和4年3月31日までは努力義務))がなされるなか、参考になる概念といえそうです。
(参考文献 『医療機関における暴力対策ハンドブック』中外医学社)

6. その他の労務管理Q&A①その他の労務管理

2022.2.14医師事務作業補助者や看護補助者等が入職後に定着していくために何か役立つ資料等はありませんか。

医療専門職支援人材が入職後に定着していくために必要だと思われる事項等を掲載した手引書と、管理者層や医療専門職支援人材本人向けのe-learning教材などが、いきサポに掲載されています。

こちらから。

2022.2.14医師事務作業補助者や看護補助者等の人材確保に関して何か役立つ資料等はありませんか。

いきサポに、医師事務作業補助者や看護補助者の職種を紹介するPR動画やポスター・リーフレット、医療専門職支援人材の確保に向けたハローワークにおける効果的な求人票の書き方マニュアルがあります。

こちらから。

2021.11.4医師には、応召義務があるため、⻑時間労働はやむを得ないのではないでしょうか。

 医師については、応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要であることが従来から指摘されていました。応召義務は実態として職業倫理・規範として機能し、純粋な法的効果以上に医師個人や医療界にとって大きな意味を持ち、医師の過重労働につながってきた側面も指摘されています。
 しかし、応召義務については、医師が国に対して負担する公法上の義務であり、医師個人の⺠刑事法上の責任や医療機関と医師の労働契約等に法的に直接的な影響を及ぼすものではなく、医療機関としては労働基準法等の関係法令を遵守した上で医師等が適切に業務遂行できるよう必要な体制・環境整備を行う必要があり、違法な診療指示等に勤務医が従わなかったとしても、それは労働関係法令上の問題であって応召義務上の問題は生じないと解されています。
 こうしたことから、応召義務があるからといって、医師は際限のない⻑時間労働を求められていると解することは正当ではないとされています。

2021.9.21採用選考にあたり留意すべき点を教えてください。特に、面接時に応募者の過去の病歴や健康状態(既往歴)などを質問してはいけませんか?

1.採用選考は、応募者の基本的人権を尊重し、また応募者の適性、能力のみを基準として行わなければなりません。そのため、家族状況や生活環境など、応募者の適性、能力に関係のない事柄について、エントリーシートに記入させたり、面接で質問することは禁じられています。具体的には、下記項目が禁止事項となります。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

2.次に、「応募者の病歴や健康状態(既往歴)」についてですが、採用面接における質問の禁止事項にはあたりません。しかし、応募者の過去の病歴や健康状態(既往歴)について、面接で質問をすることや採用合否の基準として用いることが一般的に許容されるのは「業務に必要な範囲に限定する」場合に限られます。業務に必要な範囲を超えて、過去の病歴や健康状態(既往歴)や、感染しない病気について質問することは禁止されています。HIVやB型・C型肝炎などの感染情報についても、業務に影響しない場合は個人情報を取得すべきではない、というのが一般的な考え方です。
業務遂行可否や業務遂行上のリスクを把握するために必要な質問であることを応募者に伝え、本人の同意を得た上で病歴を聞く、といった場合は問題ないと考えられますが、利用目的は採用選考に限定し、その旨も応募者に伝える必要があります。非常にナイーブな問題で、かつ応募者のプライバシーにも関わりますから、質問の意図を応募者に丁寧に説明し、いきなり口頭で聞くのではなく、チェックシートを活用するなどして、応募者に不快な思いをさせないよう配慮した方がよいでしょう。なお、取得した個人情報は、必要最小限の人事採用関係者のみ閲覧を許可する、パスワードを設定する、プリンタ出力やデータの持ち出しを不可にするなど、厳重な管理体制を整えることが求められます。

2021.8.4許可を受けていない職員のマイカー通勤のケガは通勤災害となるのでしょうか。

合理的な経路上であり、合法的な方法をとっている際に発生したものでなければ通勤災害は認められません。合理的な方法とは、住居と就業場所の間を往復する際に、一般に職員が用いると認められる手段をいい、その職員が平常用いていたか否かにかかわらず「一般的に合理的な方法」をいいます。
例えば、いつもは電車通勤している従業員が、たまたまマイカー通勤しても、これを通常の通勤方法ではない、つまり合理的な方法ではないと言うことはできません。マイカー通勤は一般に通常用いられている方法であり、合理性を否定する理由がありません。
したがいまして、マイカー通勤の許可を得ず、また、規則に違反していたとしても、就業に関しては合理的な経路によっている限り通勤災害となります。
通勤災害の認定と規則違反は全く別であり、”規則違反=通勤災害にはならない”というものではありません。
規則違反と通勤災害は別のものと考えてください。

2021.6.8育児休業の対象労働者について教えてください。

「育児休業」をすることができるのは、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者です。ただし、日々雇い入れられる労働者は除かれます。
期間を定めて雇用される労働者は、次のいずれにも該当すれば育児休業をすることができます。
①同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
②子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと
また、労使協定で定められた一定の労働者も育児休業をすることはできません。

要件を満たした育児休業の申出により労働者の労務の提供義務は消滅し、事業の繁忙や経営上の理由等により事業主が労働者の休業を妨げることはできません。

2021.6.8労使協定で育児休業の対象から除外されるのは、どのような労働者ですか?

事業主は、要件を満たした労働者の育児休業の申出を拒むことはできませんが、次のような労働者について育児休業をすることができないこととする労使協定があるときは、事業主は育児休業の申出を拒むことができ、拒まれた労働者は育児休業をすることができません。
①その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
②その他育児休業をすることができないとすることについて合理的な理由があると認められる労働者

上記②の「育児休業をすることができないとすることについて合理的な理由があると認められる労働者」とは、次のいずれかの場合をいいます。
①育児休業申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
②1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

なお「労使協定」とは、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定のことをいいます。

2021.6.8採用したばかりの労働者から、妊娠の報告がありました。産休や育休を取得させなければなりませんか?辞めてもらうことは可能ですか?

妊娠・出産等に係る法律は多岐に及びます。ここでは、労働基準法65条や育児介護休業法、男女雇用機会均等法に絞ってご説明します。
労基法65条では、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性が休業を請求した場合は、その者を就業させてはならず、また、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならないことが定められています。
また、育児・介護休業法に定める育児休業等は、法に基づく一定範囲の有期契約労働者や、労使協定で除外できる一定の労働者を除き、労働者から請求があれば与えなければなりません。
さらに男女雇用機会均等法第9条3項では、女性労働者の妊娠・出産等厚生労働省令で定める事由を理由とする解雇その他不利益取扱いを禁止しています。また、育児・介護休業法第10条等では、育児休業等の申し出・取得等を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止しています。これらの不利益取扱いの判断要件となっている「理由として」とは、妊娠・出産・育児休業等の事由と不利益取扱いとの間に「因果関係」があることを指します。妊娠・出産・育児休業等の事由を「契機として」不利益取扱いを行った場合は、原則として「理由として」いる(事由と不利益取扱いとの間に因果関係がある)と解され、法違反となります。
※原則として、妊娠・出産・育児休業等の事由の終了から1年以内(ただし、事由の終了から1年を超えている場合であっても、実施時期が事前に決まっている、又は、ある程度定期的になされる措置(人事異動、人事考課、雇止めなど)については、事由の終了後の最初の当該措置の実施までの間)に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断されます。

したがって、採用したばかりの労働者であっても、除外事由に該当しない限り育児休業等の請求があれば与えなければなりませんし、解雇等不利益取扱いもしてはいけません。
また、実際に解雇等を行わないとしても、労働者が制度等を利用する(利用しようとする、利用した)ことや、妊娠・出産したこと等に関して、解雇等不利益な取り扱いを示唆する等の言動により労働者の就業環境が害されることがあれば、ハラスメントと解される可能性があります。
報告を受けたら、妊娠を祝う温かい言葉と前向きな態度で接し、利用できる社内制度について説明のうえ、今後の働き方について本人の意向を確認するようにしましょう。

2021.6.8働く女性の母性健康管理に関する制度について教えてください。

男女雇用機会均等法では、事業主の義務として働く妊産婦の母性健康管理について次のように定めています。
1.事業主は、女性労働者が妊産婦のための保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。
①妊娠中の健康診査等回数(原則)
妊娠23週まで ・・・・・・・4週間に1回
妊娠24週から35週まで・・・2週間に1回
妊娠36週以後出産まで ・・・1週間に1回
※ただし、医師等がこれと異なる指示をしたときは、その指示に従って必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。
②産後(出産後1年以内)、医師等の指示に従って必要な時間
2.妊娠中及び出産後の女性労働者が、健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合は、 その女性労働者が、受けた指導事項を守ることができるようにするために、事業主は、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じなければなりません。
指導事項に応じた措置には次のようなものが考えられます。
①妊娠中の通勤緩和 → 時差通勤、勤務時間の短縮等の措置
②妊娠中の休憩 → 休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置
③妊娠中又は出産後の症状等への対応 → 作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の措置

あわせて労働基準法では、女性労働者の母性保護のため次のように定めています。
◆産前は女性が請求した場合は、6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から取得できます。
◆産後は原則として出産の翌日から8週間、女性を就業させることはできません。ただし、産後6週間経過後に、本人が請求し、医師が認めた場合は就業できます。
◆妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務に転換させなければなりません。
◆妊産婦等については、妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできません。
◆変形労働時間がとられる場合でも、妊産婦が請求した場合は、1日8時間及び1週間について40時間を超えて労働させることはできません。
◆妊産婦が請求した場合は、時間外労働、休日労働及び深夜業をさせることはできません。
◆生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができます。

健康診査等受診の時間や勤務時間の短縮、休憩、休業など、実際に勤務しなかった時間分の賃金については、就業規則等に明確に定めておくことが望まれます。
妊娠中及び出産後の女性労働者が医師等から受けた指導内容や、職場で講じるべき措置の内容について、的確に把握するためのツールとして、母性健康管理指導事項連絡カードをご活用ください。https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/josei/hourei/20000401-25-1.htm

2021.5.20突然の子の看護休暇、介護休暇の申請に対し、時季変更権を行使できますか

まず、子の看護休暇とは、小学校就学前の子を養育する職員が申し出ることにより、1年に5日まで(子が2名以上の場合は10日)、病気やけがをした子の看護の為に、休暇を取 得することができる制度です。
また、介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護をおこなう職員が、事業主に申し出ることにより、年に5日まで(対象被介護者が2名以上の場合は10日)休暇を取得することができる制度です。
この二つの休暇は、利用について緊急を要することが多く、業務上の影響があり、年次有給休暇で認められる時季変更権が行使できないかと考えてしまいます。
しかしながら、年次有給休暇は、継続する労働から解放することで身体のリフレッシュを図るためであり、上記看護休暇・介護休暇は被看護者・被介護者(職員)の緊急事態の為に用意された休暇制度であります。この違いから事業主の時季変更権は行使できないといえます。
事業主は、育児休業、介護休業や子の看護休暇、介護休暇の申し出をしたこと又は取得したことを理由として、職員に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないこととなっています。

2021.5.18遅刻、早退を繰り返す労働者がいます。仕事のミスも多く、いくら注意しても改善されないので解雇したいのですが、どのような点に気を付けるべきですか?

 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労契法16条)。
 解雇の「客観的合理的理由」については、①傷病等による労働能力の喪失・低下、②能力不足・適格性の欠如、③非違行為、④使用者の業績悪化等の経営上の理由(いわゆる整理解雇)、⑤ユニオンショップ協定に基づく解雇、などがこれに該当します。
 一方、「社会通念上の相当性」の判断においては、当該事実関係の下で労働者を解雇することが過酷に過ぎないか等の点が考慮されます。就業規則や労働協約が定める解雇事由に該当する場合であっても、使用者は当然に労働者を解雇できるわけではなく、解雇が権利濫用に当たらないかどうかが問題になります。
 社会的相当性の判断に際して、裁判では、使用者は教育訓練、配置転換等の手段で、解雇を回避する努力をしなければならない(セガ・エンタープライゼス事件 東京地決平11.10.15)とするものや、解雇は労働者にとって生活の基盤を覆滅させるものであるから、勤務成績や能力が不良として解雇する場合には、使用者においてその是正のための努力をし、それにも関わらず、なおその職場から排除しなければ適正な経営秩序が保たれない場合に初めて解雇が許されるものと解するのが相当(リオ・ティント・ジンク社事件 東京地判昭58.12.14)とするものもあり、労働者に有利な事情が最大限に考慮される傾向にあります。
 解雇の理由となった労働者の行為が軽微なものであり、当該理由をもって解雇を行うこと過酷に過ぎる場合や、他の労働者の取扱いとの均衡を欠く場合には、社会的相当性を欠くものとして解雇が無効となります。また、上司は繰り返し注意を行ったつもりでいても、当該労働者自身が注意を受けた認識がなく、「注意を受けたこともないのに、突然解雇された」と主張される場合もあります。
 遅刻、早退、仕事のミス等について記録するのはもちろんですが、必要な教育訓練や改善の為に繰り返し注意・指導を行ったことの記録等も、労使双方が認識できる形できちんと残した方がよいでしょう。最終的な解雇判断は、より慎重に行うべきです。

2021.4.7就業規則に規定した、退職者に対する秘密保持義務は有効ですか

在職中の職員に対しては、雇用関係から発生する誠実義務の一つとして、秘密保持義務が存在するといわれています。実際は、就業規則に明記されていることが多いと思います。近年、個人情報等を厳しく管理することが求められています。退職者の秘密保持についても順守を求めることは当然と言えます。
就業規則は、病院の秩序維持を目的とする以上、在職者の権利義務を中心に規定されることから、退職者の義務については規定されていない病院も見受けられますが、病院の秩序維持のため合理的であれば、退職者の義務についても就業規則に定めることは可能です。
就業規則の在職職員の秘密保持の条文に「退職後も同様の義務を負う」旨の規定を備えておくべきです。更に、個別の誓約書の提出を受ければ、より確実といえるでしょう。

2021.3.23令和3年4月1日施行される高年齢者雇用安定法の改正について教えてください

高年齢者雇用安定法は、少子高齢化が急速に進行し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図る法律です。高年齢者が長年培った知識・経験を十分に活かし、意欲と能力のある限り社会の支え手として活躍し続けることのできる社会の構築が求められています。

〇これまでの高年齢者雇用安定法 ~65歳までの雇用確保(義務)~
・60歳未満の定年禁止
・・事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければなりません。
・65歳までの雇用確保措置
・・定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。
・・・① 65歳までの定年引き上げ
・・・② 定年制の廃止
・・・③ 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入

〇改正のポイント ~70歳までの就業機会の確保(努力義務)~
65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務を新設。(令和3年4月1日施行)
・① 70歳までの定年引き上げ
・② 定年制の廃止
・③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
・・(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
・④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
・⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
・・a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
・・b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

●「厚労省 高年齢者雇用対策 70歳」検索

※看護師の人材確保・人材不足解消の対策が求められています。継続雇用の勤務体系をフルタイム以外にも短時間や短日の勤務を取り入れて柔軟に働ける制度を設けたり、勤務場所も病院に加え他の施設も選択できるようにしたり、健康面や個人の事情に合わせた働き方が選択できるような長く働ける環境整備、人材育成がポイントになります。多様な職種の人材が柔軟な勤務体系で長期間の継続雇用が実現することで若い世代にとってもモチベーションの向上が図られ、退職者の再雇用につながる効果も期待できるのではないでしょうか。

2021.3.12副業・兼業を認める場合の注意点について教えてください

これまでは、本業に対する支障や企業秘密の漏洩・競業・利益相反等の点から副業・兼業が認められないケースが多数でしたが、キャリア形成といった自己実現の追求、十分な収入の確保といった理由から、副業兼業を希望する職員が出てきました。
政府は「柔軟な働き方がしやすい環境整備」の一つとして副業・兼業の普及促進を図っており、厚生労働省においても「副業兼業の促進に関するガイドライン」を作成しています。
副業兼業を容認する場合は、ただ黙認するのではなく、就業規則において一定のルールを定める必要があります。
厚生労働省が示した就業規則のモデルでは、原則として副業・兼業を認めた上で、届け出制とし、
①労務提供上の支障がある場合 ②企業秘密が漏洩する場合 ③会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 ④競業により、企業の利益を害する場合
といった禁止・制限できる場合を挙げています。
また、労働基準法38条に「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とされており、職員から副業・兼業の内容の申告だけでなく労働状況の申告を受け、労働時間を詳細に管理する必要があります。そして、副業・兼業により健康を害することがないよう必要な健康確保措置を講じておく必要もあります。

2021.2.19業務委託が偽装請負(労働者派遣)となる場合を教えてください。

請負(業務委託)とは「いついつまでに、これこれの仕事をやってください」という形で仕事を受けることです。
実態としては労働者派遣であるのに、請負という形だけをとった「偽装請負」と考えられるものがあります。形式的に請負契約(業務委託契約)がなされていても、実質的には受託者の労働者を職員と同様に指揮・命令して、業務を遂行しているといったケースです。
請負と派遣との違いは、請負は発注者と受託労働者との間に指揮・命令権あるか、ないかがポイントです。
「偽装請負」は、職業安定法、労働基準法、労働者派遣法などに違反し、違法です。

2021.1.22職員を解雇する場合の「解雇予告除外認定制度」について教えてください

職員を解雇する場合は、少なくとも30日前に解雇を予告するか、それをしない場合は、30日分以上の解雇予告手当を支払わなくてはなりません。(労基法第20条)ただし、天災事変その他やむをえない事由により解雇する場合や労働者の責に帰すべき事由より解雇する場合は、行政官庁(労働基準監督署)の認定を受けることで、前記予告や予告手当を支払うことなく、即時解雇することができます。これを「解雇予告除外認定制度」といいます。
この除外認定を受けるに当たって、労働者の責に帰すべき事由とは、病院が定める懲戒事由より、より厳格に判断されます。そのため、書類審査だけでなく、労働基準監督署の担当官が、対象職員その他の関係者に対し実地調査を行うため、申請から認定の判断がなされるまで一定の期間がかかります。こうした手続きのため、「除外認定制度」を申請することなく、解雇予告又は解雇予告手当の支払いで行うことが多いのが現状です。

2020.12.9解雇予告と解雇予告手当について教えてください

職員を解雇する場合は、少なくとも30日以上前に予告をするか、予告に代えて30日分以上の平均賃金を支払わなくてはならない。(労基法第20条)
これは、解雇する場合
①少なくとも30日前までに解雇の予告をする
②30日分以上の平均賃金((解雇予告当)を支払えば、即時解雇ができる
③予告と平均賃金(解雇予告手当)の併用により、30日分以上確保する
ことが求められています。
この場合、30日とは解雇予告をした日は含まれず、その翌日から起算して30日を確保する必要があります。つまり、解雇予告日と雇用関係がなくなる日との間に中30日を置くことになります。
解雇予告手当の支払い時期については、「解雇の申し渡しと同時に支払うべき」とされています。また、本人に渡せなかったり、受領を拒否される場合は、「労働者が受け取りえる状態にしておくこと」で要件は足りるとされていますが、法務局に供託することも可能です。

2020.11.6働き方改革関連法案やパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)では、大企業と中小企業で施行時期が異なる制度が見受けられますが、中小企業の範囲はどこまでになりますか。また医療法人の場合はどうなりますか。

大企業か中小企業かは「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する従業員の数」で判断されます。これは事業場単位でなく、企業単位で判断されます。業種の分類は総務省の「日本標準産業分類」に従います。ただし、出資持分のない医療法人など、資本金や出資金の概念がない業態は従業員数のみで大企業か、中小企業かを判断します。医療法人の場合、サービス業に分類されるので、従業員100人以下であれば中小企業と判断します。ただし、出資持分がある場合は、それを含めて判断することとなります。

2020.10.29賃金の消滅時効について教えてください

令和2年4月1日労働基準法改正により、労働者の賃金請求権についての消滅時効が従来の2年間から5年間に延長されました。

ただし施行規則により「当分の間、3年とする」と猶予期間が設けられました。退職金については従前のまま5年で変更はありません。

これは民法の短期消滅時効が廃止されたことや、従来の2年の消滅時効では請求したくてもできないまま期間を経過するといった現実的な問題を踏まえ、労働者の権利拡充する方向で改正となりました。

これに伴い、賃金台帳などの記録の保存期間も5年に延長され、当分の間は3年間の保存が必要となりました。

この改正は、もし時間外労働等の賃金が法律に則って支払われていなかった場合、未払い賃金の支払い額が増えることを意味します、再度、自院の残業代等の支払い方法が適法か検証する必要がありそうです。

 

2. 健康管理に関すること①健康診断

2021.1.12短時間労働者(パートタイム労働者)の健康診断について教えてください。

 短時間労働者(パートタイム労働者)については次の健康診断を実施しなければなりません。

① 常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断
② 深夜業を含む業務等に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
③ 一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
④ その他必要な健康診断

この場合において、事業主が同法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②)のいずれの要件をも満たす短時間労働者(パートタイム労働者)です。

① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上(労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては6月。以下この項において同じ。)である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)
 ② 1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上

なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいとされています。

2020.10.19健康診断の事後措置について教えてください。

事業者は、健康診断の結果(健康診断の項目に異常の所見があると診断されたものに限ります)に基づき、健康保持のために必要な措置について、医師又は歯科医師の意見を聴かなければなりません(労働安全衛生法(以下「安衛法」)第66条の4参照)。
 この意見聴取の義務は、事業場の規模にかかわりなく(産業医の選任義務の有無にかかわりなく)課されています。
 なお、意見聴取は健康診断が行われた日から原則として3カ月以内に行い、聴取した医師または歯科医師の意見を健康診断の個人票に記載することとされています(労働安全衛生規則(以下「安衛則」)第51条の2参照)。
 そして、健康診断の結果についての医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、その職員の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設または設備の設置・整備、医師又は歯科医師の意見の衛生委員会等への報告その他の適切な措置を講じなければなりません(安衛法第66条の5参照)。
 また、職員が自らの健康状態を把握する必要があることから、健康診断の結果を職員に対して遅滞なく通知することが事業者に義務付けられています(安衛法第66条の6、安衛則第51条の4参照)。
 さらに、職員自身による自主的な健康管理を促進するため、健康診断の結果所見を有するような職員に対して、どのようにして健康管理を行うかについて、医師又は保健師による保健指導を実施することが事業者の努力義務となっている一方、職員についても、健康診断の結果や保健指導を利用して健康管理に努めることとされています(安衛法第66条の7参照)。
 事業者は、健康診断個人票を5年間保存し(安衛法第66条の3、安衛則第51条参照)、定期健康診断等の結果報告書を所轄の労働基準監督署長に提出(職員(労働者)数が常時50人以上の場合)しなければなりません(安衛則第52条参照)。
 なお、定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する検診項目(血圧・血中脂質・血糖・腹囲または肥満度)のすべてに所見が見られた場合等に、二次健康診断及び特定保健指導を、労災保険給付の現物給付として無料で受けられます(申請行為が必要であること、請求期間の制限などがあります)。
具体的な措置に関しては、健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/kouji/K170417K0020.pdf)が参考になります。

2020.10.15健康診断について教えてください。

病院で行われる一般健康診断にはいくつか種類があり、事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。
「雇入れ時の健康診断」は、常時使用する労働者が対象で雇入れの際に行います。
また雇入れ後1年以内ごとに一回、定期的に行う「定期健康診断」があります。
「特定業務従事者の健康診断」は、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務や深夜業を含む業務等が対象となり、その業務への配置替えの際と6月以内ごとに1回の実施が義務づけられています。他にも重量物の取扱いなどいくつか特定業務が定められています。
食堂や厨房で給食の業務に従事する労働者には、雇入れの際と配置替えの際に「給食従事員の検便」の実施が求められます。
その他海外に6ヶ月以上派遣する労働者に対して行う、「海外派遣労働者の健康診断」があります。
労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。健康管理に努めましょう。

4. 労働条件等に関すること①労働契約等

2021.10.28医師は、労働者なのですか。

 医師も、雇用されている(勤務医)ならば労働者であり、労働基準法等が適用されます。

2021.8.25採用内定者に事前研修を行うことは可能ですか

採用内定の法律的考え方に、採用内定による労働契約の成立が入職日とする考え方と、採用内定時点で労働契約の効力が生じるとする考え方があるとされます。前者の場合は、内定期間中は業務命令による研修の参加は命じられませんが、後者の場合は、命じることができると考えられています。
実務的には、採用内定時に入職日までに事前研修がある旨伝え、同意を得ておくことをお勧めします。
上記同意が得られなかった場合は、研修を受けなかったことを理由としての内定取消しはできませんが。同意があった場合でも、学業等の理由により参加できなかったといった合理的な理由があった場合は不参加を理由としての内定の取り消しは難しいと言えます。
また、その研修が、「労働」に該当するといえる場合は、賃金の支払いも考慮しておく必要があります。

2021.8.18採用にあたり試用期間はどの位が適切ですか、また、期間の延長はできますか

試用期間の長さに法律の規制はありませんが、3ケ月ないし6ヶ月としている企業が多いようです。これは、試用期間とは使用者が解約する権利を保留した「解約権留保付労働契約」という考え方が一般的で、契約上、本採用後と比べて不安定な状態に置かれる労働者を保護する必要から、この長さが、あまりに長いと争いになる場合があります。
期間は、就業規則等に定められていても、著しく長いと判断されると公序良俗に違反するとして無効となる場合もあります。
よって、試用期間が、適格性を判断する十分な期間を設けるという観点から、業務内容、必要な経験等を考慮して合理的な期間設定をする必要があります。
上記試用期間中に適格性の判断ができなかった場合は、試用期間の延長はできるかということになりますが、その場合、就業規則等に延長の根拠が定められていることが必要であり、さらに、試用期間を延長する合理的な理由が必要とされます。

2021.7.1新たに有期雇用契約を結びます、「更新回数は4回を限度とする」といった契約で雇止めはできますか

有期雇用労働者の無期転換制度が決まってからは、特に更新上限条項についての質問が多くなりました。
ただ単に、契約書に更新上限条項があるだけでは、雇止めができるとは言えません。
有期契約労働者が更新上限条項に関して説明を受け、その内容を理解し、自由な意思で有期労働契約を締結した場合には、更新上限を超えての合理的な期待が生じないとして、雇止めを可能とする傾向にあります。
具体的には、更新上限までの契約の都度、契約書を取り交わし、更新手続きをキチンと行います。その際、更新上限を超えて継続雇用を示唆するような言動は避け、同じ契約内容の労働者も同じように運用を厳密に行い、対象労働者に合理的期待を生じさせないようにすることが必要です。

2020.12.9長期の労働契約を結ぶ場合の注意点について教えてください

労基法では、労働契約の期間については、原則として3年を超えてはならないとしていますが、次の2種類の労働契約については5年としています。(労基法14条)
(1)専門的な知識、技術又は経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識を有する労働者との間に締結される労働契約
  具体的に医療関係としては、⓵博士の学位を有する者 ⓶医師 ⓷歯科医師 ⓸薬剤師など
(2)満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約
  この場合、高度専門知識等の制約がないので、一般業務従事者でも5年契約を結ぶことも、更新することも可能です。
なお、長期契約は、長く働いてもらえる長所がありますが、反面、定めた雇用期間中の雇用責任があり、途中解雇の場合は、期間の定めのない契約における解雇権乱用法理より制約が厳しいものとなることに注意が必要です。

2020.9.10採用した職員に何を明示すればよいですか?

労働基準法第15条第1項には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定されています。

明示すべき事項は労働基準法施行規則第5条第1項に規定されており、
(1)労働契約の期間に関する事項
(2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
(3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
(4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
(7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
(9)安全及び衛生に関する事項
(10)職業訓練に関する事項
(11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(12)表彰及び制裁に関する事項
(13)休職に関する事項

について明示しなければなりません。
また、これらの内(1)から(5)((4)の内、昇給に関する事項を除く。)については書面の交付により明示が必要になります。

1. 労働時間管理に関すること①時間外労働

2021.9.936協定届で「労働させることができる休日」に記載する休日数とは、法定休日のことでしょうか、それとも、所定休日のことでしょうか

法定休日のことです。時間外労働休日労働に関する協定届には、所定休日という欄があり、その右横に「労働させることができる休日」の欄があるため、まぎらわしいのですが、当該欄に記載する休日数は1週1日の法定休日のことです。つまり、この欄に「1ヶ月に2日」と記載したとすれば、1ヶ月に2日の法定休日労働をさせることができるという意味になります。

2021.7.5院内で行う自主的な勉強会の時間も労働時間になるのでしょうか。

労働時間は、使用者の指揮命令下にある時間を言います。
指揮命令下とは、使用者がその場に居なかったり、命令していなくとも、実態として指揮命令下にあるとものと同等の状態を含みます。
したがって、勉強会が「自主的」と銘打っていても、使用者の関与が強く、出席が事実上強制されている実態にある場合には、労働時間となります。

2021.2.252021年4月からの新しい36協定の様式について教えてください。

36協定届(時間外・休日労働に関する協定届)が新しくなります。
36協定届における押印・署名の廃止
労働基準監督署に届け出る36協定届について、使用者の押印及び署名が不要となります。
記名はしていただく必要があります。
注意点
36協定の締結には、労使で合意したうえで労使双方の合意がなされたことが明らかと
なるような記名押印又は署名などの方法が必要になります。
36協定の内容を36協定届に記入し労働基準監督署に届出を行ってください。
36協定書と36協定届を兼ねる場合は記名押印・署名などが必要です。
36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設
36協定の適正な締結に向けて、労働者代表についてのチェックボックスが新設されます。
(労働者代表:事業場における過半数代表者または過半数労働組合)
注意点
過半数代表者の選任にあたっては、管理監督者・使用者の意向に基づいて選出された者でないことや
36協定を締結する者を選出することを明らかにした上で、投票挙手等の方法で選出することが求められます。
病院の利益を代表する管理者等は該当しないのでご注意ください。
(「Q2020.10.14 36協定は誰と結べばいいのですか」参照)
●●届出後、見やすい場所への掲示や書面等の交付により周知させましょう。
●●電子申請による届出が可能です。
・36協定届様式のダウンロード 【「労働基準関係主要様式」検索】
・そのまま出せる36協定届を作成【「スタートアップ労働条件」検索】
・36協定の電子申請はこちら 【「労基法等 電子」検索】

2021.1.14時間外労働・休日労働についての労働基準法のきまりと罰則はどのようなものですか

労基法は労働時間について1日8時間、1週40時間の原則を定め(労基法32条)、休日については毎週1日を与えなければならないと定めています。(労基法35条1項)これらに違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が予定されています。(労基法119条1項)
但し、事業場で労使が時間外休日労働に関する労使協定(36協定)を締結していた場合には、36協定で定める時間外労働時間数や休日労働の日数の限度内で、労働させることは可能です。しかし、それを超えて時間外労働をさせたり、休日労働をさせた場合、上記刑罰が適用されることとなります。
平成30年に改正された労基法36条6項で、新たな規制が加わりました。これは、36協定の限度時間や特別条項の上限とは別に、労働者個人の時間外・休日労働時間数が100時間以上となった場合にも、労基法119条1項の違反となります。

2020.12.1136協定の「特別条項」とはどういうものしょうか。どんな手続きが必要ですか。

時間外労働の上限について、大企業は2019年4月以降、中小企業は2020年4月以降の協定から法律上、原則として月45時間・年360時間となりました。(医師については2024年(令和6年)3月31日までの間は、適用されません)

但し、臨時的な特別の事情があるため、原則となる時間外労働の限度時間(月45時間・年360時間)を超えて時間外労働を行わせる必要がある場合には、通常の36協定届(様式第9号)に加え、さらに以下の事項について労使が合意して協定した上(特別条項)で、限度時間を超える場合の36協定届(様式第9号の2)を所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。

①臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合における
・1か月の時間外労働+休日労働の合計時間数 (100時間未満)
・1年の時間外労働時間 (720時間以内)
②限度時間を超えることができる回数(年6回以内)
③限度時間を超えて労働させることができる場合
④限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置
⑤限度時間を超えた労働に係る割増賃金率
⑥限度時間を超えて労働させる場合における手続

今回の法改正では、この上限時間内で労働させた場合であっても、実際の時間外労働と休日労働の合計が、月100時間以上または2~6か月平均80時間超となった場合には、法違反となります。このため、時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とすることを、協定する必要があります。36協定届の新しい様式では、この点について労使で合意したことを確認するためのチェックボックスが設けられています。

そして③限度時間を超えて労働させることができる場合とは、「臨時的な特別の事情がある場合」に限ります。限度時間(月45時間・年360時間)を超える時間外労働を行わせることができるのは、通常予見することのできない業務量の大幅な増加など、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められません。

また、④健康・福祉確保措置の内容については、以下のものから定めることが望ましいことに留意してください。
①医師による面接指導
②深夜業(22時~5時)の回数制限
③終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
④代償休日・特別な休暇の付与
⑤健康診断
⑥連続休暇の取得
⑦心とからだの相談窓口の設置
⑧配置転換
⑨産業医等による助言・指導や保健指導

医師については2024年(令和6年)3月31日までの間は延長時間について上限はありませんが、時間外労働を行うにあたっては36協定の締結と届出は必要であり、延長できる時間もその協定に定められた時間までとなります。不必要な時間外労働を抑制する意味からも、できる限り短い延長時間とするようご留意ください。36協定届は「適用猶予期間中における、適用猶予事業・業務に係る時間外・休日労働を行わせる場合」の様式第9号の4を使用できます。

その他詳細については、厚生労働省が作成したパンフレット「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf

2020.10.1436協定は誰と結べばいいのですか

 労働基準法で規定する各種労使協定の労働者側の協定当事者は、事業場の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、組合のない場合等は事業場の労働者の過半数を代表する者となっています。しかし、実態は病院の利益を代表する管理職等がこれになっている例が多くみられるようです。
 現在、労働基準法施行規則第6条の2において、過半数代表者の要件が明確に定められています。
 次のいずれにも該当する者となっています
  ①監督または管理の地位にある者でないこと
  ②協定を結ぶことをする者と明らかにして実施される投票、挙手等の手続きにより 
   選出された者であり、使用者の意向に基づき選出された者でないこと
 なお、使用者は、労働者が過半数代表者であることや過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをしてはならないとされています。

2020.8.20残業をする場合は36協定というものが必要だと聞きました。36協定とはどのようなものでしょうか。

 労働基準法では労働時間は原則として1日8時間及び1週40時間以内(「法定労働時間」と言います)で、休日は週1回又は4週4日と定められています。職員にこの時間を超える残業や休日出勤をさせるためには、病院と職員の代表者とで「36協定」を締結し、所轄の労働基準監督署に届出をしなければなりません(締結だけでは足りず、労働基準監督署への届出まで必要です)。
36協定は正確には「時間外・休日労働に関する協定」と言います。36協定の呼び名は、労働基準法36条に規定があることから来ています。
36協定を結ばず、届出もすることなく、職員に法定労働時間を超える残業・法定休日に労働させたら法律違反となり、6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金の対象になります。また協定した制限時間を超えて働かせた場合も同じです。また36協定が締結・届出がされていない場合、例え残業代をちゃんと支払ったとしても法律違反は免れません。
なお、36協定が必要なのは「法定労働時間」を超えての残業をさせる必要がある場合であり、「所定労働時間(就業規則や雇用契約書で定められた始業時間から終業時間まで(休憩時間を除く)の労働時間)」を超えても、法定労働時間を超える労働がない場合は不要となりますが、法定労働時間を超える可能性があるのであれば前もって締結・届出をしておいた方がいいです。
詳しくは労働基準監督署にお問い合わせください。

 

2. 健康管理に関すること②メンタルヘルス

2021.10.12職員がメンタルヘルス不調で休職しています。定期的な病状報告を求めたいのですが問題ないでしょうか。

本人の状況・体調を確認することで、復職のタイミングを図る必要があることから、「休みの間も定期的な連絡を取る」ことは重要です。その際には、休職している理由を証明するために、主治医が発行した診断書を受領する必要があります。
なお、頻度としては月1回、診断書の有効期限を切らさないことが重要です

2021.10.5職員がメンタルヘルス不調の診断書を持ってきました。どのような対応が必要でしょうか

メンタル不調の職員を働かせると、症状が悪化し、さらに悪い事態を引き起こし、病院がその責任を負わなければならない状況が生じる可能性もあります。判断が難しい場合は、本人と面談した上で、不調の原因や事実関係等を十分聞き取り、それを基に上長や同僚の職員に仕事の状況や人的関係などについて必要な調査を踏まえた上で、「勤務を続けながら治療していくのか」もしくは「就業規則に基づく休職をさせるのか」総合的な判断をする必要があります。

2021.2.4ストレスチェック制度の目的等について教えてください。

 ストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを主な目的としたものです。
 平成26年6月25日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」において、心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)及びその結果に基づく面接指導の実施等を内容としたストレスチェック制度(労働安全衛生法第66条の10に係る事業場における一連の取組全体を指す)が新たに創設されました。
 常時50人以上の労働者を使用する事業場にはストレスチェック制度の実施義務があります。この場合の「労働者」には、パートタイム労働者や派遣先の派遣労働者も含まれます。また、それ以外の事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場)については、ストレスチェック制度は当分の間、努力義務とされていますが、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止のためできるだけ実施することが望ましいです。
 なお、個々の労働者がストレスチェックの実施義務の対象となるか否かの判断についてですが、ストレスチェックの対象者となる「常時使用する労働者」とは、次の①、②いずれの要件をも満たす者をいいます(一般定期健康診断の対象者と同様です)。
 ① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
 ② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
 また、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である労働者であっても、上記の①の要件を満たし、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しては、ストレスチェックを実施することが望まれます。
詳しくは、こちらのホームページから実施マニュアル等がダウンロードできます。
厚生労働省 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等

2021.1.8「いつもと違う」部下への気づきについて教えてください。

 ラインによるケアで大切なのは、管理監督者が「いつもと違う」部下に早く気付くことです。「いつもと違う」という感じをもつのは、部下がそれまでとは異なる行動をするからです。その例を以下に示しました。速やかな気付きのためには、日頃から部下に関心を持って接し、いつもの行動様式や人間関係の持ち方について知っておくことも重要です。

「いつもと違う」部下の様子
 ○ 遅刻、早退、欠勤が増える
 ○ 休みの連絡がない(無断欠勤がある)
 ○ 残業、休日出勤が不釣合いに増える
 ○ 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する
 ○ 業務の結果がなかなかでてこない
 ○ 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
 ○ 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
 ○ 不自然な言動が目立つ
 ○ ミスや事故が目立つ
 ○ 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

 「いつもと違う」部下に対しては、管理監督者は職務上何らかの対応をする必要があります。管理監督者が「いつもと違う」と感じた部下の話を聴き、産業医のところへ行ってもらう、あるいは管理監督者自身が産業医のところに相談に行く仕組みを事業場の中に作っておくこと等が望まれます。

 なお、話を聴く時のポイントは以下の通りで、こうした話の聴き方を、「傾聴」と言います。

1. 相手を受け止める
 相手に対して関心を持ち、関心を持っていることを表情や態度で相手に伝える。
2. 相手の立場に立つ
 もしも自分が相手と同じような立場に置かれていたら、相手と同じようなことを言ったり、したりするんだろうなぁと考えながら、話を聴く。

 詳しくは、以下が参考になります。
e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」
https://kokoro.mhlw.go.jp/e-learning/linecare/
職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00002.html

2021.1.4職場におけるストレス要因について簡単に教えてください。

 まず、どういったときに職場のストレスが大きくなるかについて、仕事の要求度(負荷)が大きく、仕事の自由度が小さく、周囲からの支援が小さい場合に、高ストレス状態となり、職場のストレスが大きくなります。
 そして、ストレス要因としての職場環境には、仕事の負荷や自由度のほかに、作業環境(温度湿度、照明、騒音など)、作業方法(作業スペースや作業姿勢、身体や感覚器官への負荷など)、人間関係、組織形態(指揮命令系統、責任や権限などの仕組み)などが含まれています。
 新しい課題に挑戦し、それを乗り越えた経験等、多少のストレスは人を成長させ、職場の活性化にもつながります。しかし、仕事による過度なストレスは疲労を蓄積し、職員の健康問題を発生させるだけでなく、事故の発生や生産性の低下の要因となります。
 職場環境改善の5つのステップ(①職場環境の評価②職場環境のための組織づくり③改善計画の立案④対策の実施⑤改善の効果評価)や、医療勤務環境改善マネジメントシステム等により、ストレス要因を特定し、できるものから改善していく努力を続けることが大切です。
(参考)
 e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」
https://kokoro.mhlw.go.jp/e-learning/linecare/
 医師の「働き方改革」へ向けた医療勤務環境改善マネジメントシステム導入の手引き(詳細説明版資料)
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/outline/download/pdf/c5108423b39b60946160943e2352c620bb892d26.pdf

2020.12.22メンタルヘルス対策を効果的に進めるためのポイントや、医療従事者の特性に応じた取組のポイントを教えてください。

 ストレスやメンタルヘルス不調の背景には、職場における人間関係やハラスメント、過度な長時間労働等、様々な要因があります。メンタルヘルス対策を効果的に進めるためには、職場環境における課題を把握し、改善を図ることが重要です。
 ただし、ある一時点の状況を切り取ったり、単に労働時間が長いことを理由として、ストレス度が高い職場・低い職場と決めつけることは望ましくないことに留意が必要です。
 そして、各事業場において職場環境における課題を適切に把握するとともに、次のような取組を進めることが重要です。
(1)メンタルヘルス対策に関する方針の表明
 メンタルヘルス対策は、労働者、管理監督者等、それぞれの立場で取り組むことが重要です。メンタルヘルス対策に取り組むことを労働者に周知し、理解・協力を促すとともに、経営層を巻き込んだ組織的な取組につなげていきます。
(2)メンタルヘルス対策に関する計画の策定・見直し
 メンタルヘルス対策が継続的かつ計画的、組織的に行われるようにするためにも、労使の協議のもと、事業場の実態に即した取組を行う必要があります。そのためには、衛生委員会等を活用し、メンタルヘルス対策の計画を策定することが効果的です。
(3)事業場外資源の活用
 事業場によっては、メンタルヘルス不調者への対応が難しい場合があります。そのような場合には、事業場外資源を有効に活用することが重要です。
(4)関係者への理解・協力の呼びかけ
 取組を進めるために、関係者の理解・協力が必要な場合があります。対策を一緒に検討することで、理解・協力を確保する方法があります。
 また、医療従事者の特性に応じた取組のポイントについては、医療は人の命や健康を預かる仕事であるため常に高い緊張にさらされており、安全性を確保しながら適切な医療・きめ細かなケアを提供するためにも、医療従事者の負担軽減による働きやすい職場づくりの重要性が増していることに、まず留意が必要です。
 そして、医師や看護職員を対象とした調査(平成30年版 過労死等防止対策白書)では、業務に関連したストレスや悩みとして、医師では「個別患者の様子」のほか「休日・休暇の少なさ」や「患者(家族)からのクレーム対応・訴訟リスク」が、看護職員では「職場の人間関係」や「夜勤の負担の大きさ」が上位に挙げられ、看護師等の精神障害の労災認定事案をみると、事故への遭遇や災害の体験にまつわるものや、暴力を受けたものがあります。
 したがって、医療従事者における心身の健康を確保するためには、過度の長時間労働の是正や夜勤負担の軽減、対人関係に関する対策に取り組むことが重要であり、看護師等については、事故への遭遇や災害の体験、暴力等に関する予防と事後措置の取組も重要です。
 また、相談しやすい環境づくりも重要です。
 業種や職種が違っても、参考になる取組も多くあるため、こちらの「事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集」が参考になります。
https://www.mhlw.go.jp/content/000615709.pdf

2020.12.15ワーク・エンゲイジメントを高めるためには、どうすればよいのですか?

 ワーク・エンゲイジメントを高める要因として、仕事の資源、及び個人の資源(心理的資本)があり、これらが満たされれば、ワーク・エンゲイジメントの向上につながります。
 仕事の資源とは、例えば、上司や同僚のサポート、仕事の裁量権、パフォーマンスのフィードバック、コーチング、課題の多様性、トレーニングの機会、等のことです。個人の資源(心理的資本)とは、例えば、自己効力感、組織での自尊心、楽観性、レジリエンス、等のことです。

 仕事の要求度-資源モデル(JD-R モデル)によれば、これらが満たされれば、ワーク・エンゲイジメントを向上させる作用に加え、心理的ストレス反応の低減にも作用します。つまり、個人・仕事の資源の充実は、健康増進とパフォーマンス向上の両者に効果があることになります。なお、職場環境のみならず、十分な休息や趣味など、職場外の要因にも着目することも重要です。

 人手不足下では、職員が、高い仕事の要求度(例えば、仕事のプレッシャー、対人業務における情緒的負担、精神的負担、肉体的負担、等)に直面する可能性が高くなると考えられ、その中で「働きがい」を向上させていくためには、仕事の資源を活用できる環境を整備していくことが、重要な「鍵」となります。

 資源を増加させ、ポジティブな感情の増幅によりワーク・エンゲイジメントが向上し、仕事のパフォーマンスが増加し、これが原動力となり次の資源増加につながる、というサイクルを築くことが重要です。

 

(参考文献)

・厚生労働省 令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-

・使える!健康教育・労働衛生教育 65 選 森晃爾 編 日本労務研究会

2020.11.19ワーク・エンゲイジメントについて、端的に教えてください。

 社会経済状況の変化に伴い、職場のメンタルヘルス活動では、精神的不調への対応やその予防にとどまらず、個人や組織の活性化を視野に入れた対策を行うことが、広い意味での労働者の「こころの健康」を支援する上で重要になってきました。このような流れを受けて 2000 年前後から、心理学および産業保健心理学の領域でも、人間の有する強みやパフォーマンスなどポジティブな要因にも注目する動きが出始めました。このような動きの中で新しく提唱された概念の 1 つがワーク・エンゲイジメント(Work Engagement)(Schaufeli, Salanova, Gonzalez-Romá, et al., 2002; 島津, 2014)です。
 ワーク・エンゲイジメントとは「仕事に誇りややりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)の 3 つがそろった状態であり、バーンアウト(燃え尽き)(Maslach & Leiter, 1997)の対概念として位置づけられています(ワーク・エンゲイジメントは、活動水準が高く仕事への態度・認知が肯定的であるのに対して、バーンアウトは、活動水準が低く仕事への態度・認知が否定的)。
 また、ワーク・エンゲイジメントの高い従業員は、心身の健康が良好で、生産性も高いことが分かっています。
 なお、「過度に一生懸命に強迫的に働く傾向」を意味するワーカホリズム(Schaufeli, Shimazu, & Taris, 2009)は、活動水準は高いものの仕事への態度が否定的である点で、ワーク・エンゲイジメントと異なります。

2020.8.1最近、職員に笑顔が見られなくなり、視線を合わせることがなく、伏し目がちになっています。メンタル不調の心配もあり、どうすればよいのか困っています。

まず、職場におけるメンタルヘルス対策に関する基礎をご確認されることをお勧めいたします。

厚生労働省が、労働安全衛生法に基づき「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日公表)を策定し、メンタルヘルスケアの進め方や留意点などを示しています。

職場のストレスには、職員自身の気づきと対処が必要であることのみならず、職場で組織的・計画的にメンタルヘルス対策を行うことが重要です。また、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、一次予防(未然防止)、二次予防(早期発見、適切な措置)、三次予防(不調者の職場復帰支援)を円滑に行う必要があります。

メンタルヘルスケアを進める際の留意点としては、①心の健康問題の特性の理解(個人差があり、評価・プロセスの把握が困難)、②個人情報保護への配慮、③人事労務管理との連携、④家庭・個人生活等の職場以外のストレス要因も影響し合うことをおさえることが大切です。

そして、衛生委員会等で「心の健康づくり計画」を策定(確認)し、4つのケアを行います。4つのケアとは、①職員自身による対処である「セルフケア」、②管理監督者による対処である「ラインによるケア」、③産業医、衛生管理者、保健師等による対処である「事業場内の産業保健スタッフ等によるケア」、④外部機関等による支援である「事業場外資源によるケア」です。

メンタルヘルスケアの進め方としては、個人情報の保護に配慮しつつ、①教育研修・情報提供、②職場環境等の把握と改善、③メンタルヘルス不調への気づきと対応、④休職者の職場復帰における支援を行います。

メンタルヘルス対策は、医療勤務環境改善マネジメントシステムとも密接に関係します。

また、医師に関して、月に4日以下しか休日を取っていない医師が46%おり、医師の53%は自身の体調不良について全く相談しないという報告もあります。

事業場外資源の活用として、医療勤務環境改善支援センターの活用も1つの方法です。働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」(https://kokoro.mhlw.go.jp/)やいきいき働く医療機関サポートWeb「いきサポ」(https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/)などもご参考に、対策を進めていかれてはいかがでしょうか。

1. 労働時間管理に関すること②勤務時間・休日・休憩・勤務シフト

2021.10.21労働時間該当性の取扱いの明確化について、何か参考になる例はありますか。

 例えば、自己研鑽など労働時間に該当するものとしないものを明確化し、院内で周知することにつき、以下のような例があります。
 (1)労働時間に該当するもの
  A 診療に関するもの
   1 病棟回診
   2 予定手術の延⻑、緊急手術
   3 チャーティング
   4 サマリー作成
   5 外来の準備
   6 オーダーチェック
   7 診療上必要不可⽋な情報収集
  B 会議・打合せ
   1 必須出席者である会議・委員会
   2 参加必須の勉強会・カンファレンス
  C 研究・講演その他
   1 上⻑の命令に基づく学会発表の準備
   2 上⻑の命令に基づく外部講演等の準備
   3 上⻑の命令に基づく研究活動・論⽂執筆
 (2)労働時間に該当しないもの
  A 休憩・休息
   1 食事
   2 睡眠
   3 外出
   4 インターネットの閲覧
  B 自己研鑽
   1 自己学習
   2 症例⾒学
   3 参加任意の勉強会・カンファレンス
  C 研究・講演その他
   1 上⻑の命令に基づかない学会発表の準備
   2 上⻑の命令に基づかない外部講演等の準備
   3 上⻑の命令に基づかない研究活動・論⽂執筆

2021.10.7病院に勤務する医師が、セミナー講師を引き受けました。その時間は労働時間に該当しますか。

 一般論としてお答えいたします。病院に勤務する医師が、勤務先以外の⽅から頼まれて、セミナーの講師を引き受けるなど、労働者としてではない形で役務を提供することもあるかと思いますが、そのような場合、その時間は労働時間には該当しません。
 しかし、勤務先から指示されて実施する場合は労働時間です。また、セミナー主催者に雇用されて実施する場合も労働時間となります。

2021.9.1患者や利用者への訪問した場合の移動時間は労働時間となりますか

訪問診療・訪問介護の必要性が高まっています。
その移動時間が労働時間にあたるかどうかは、その移動時間において職員の自由利用が保障されていたかという実質的な判断にはなりますが、原則として以下のケースにより違ってきます。
①自宅から訪問先への移動時間
この時間は、基本的に通勤時間として取り扱われます。通常は、自由利用が保障されているので、労働時間に該当しません。
⓶訪問先から訪問先又は訪問先から職員の病院・事務所への移動時間
この時間は、通常、移動に努めることが求められており、自由利用が認められる特別な事情がない限り、労働時間となると考えられています。
③訪問先から自宅への移動時間
この時間は、①の取扱いと同様通勤時間として取り扱われます。

2021.6.1職員の休憩時間に急患対応をお願いしました、休憩の分割付与は問題ありませんか

労基法上、休憩時間を分割して付与することは可能です。
医師等(医師・薬剤師・歯科医師・助産師)は、法律により、応召義務が課されています。看護師等には応召義務は課されていませんが、急患対応の場面では、休憩時間を中断せざるを得ない場合は考えられます。この場合、中断がなければ休憩するであった時間分を、改めて労働時間の途中に休憩時間として付与する必要があります。
就業規則に、休憩時刻を記載する場合は、業務上の都合により休憩の時刻を変更することがある、又は分割して与えることがあることを記載しておくべきでしょう。

2021.3.18休憩時間中の外出は制限できますか

労基法では、「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」第34条3項と自由利用の原則を定めています。この自由利用の意義について行政解釈は、「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えない」としており、この原則と休憩時間中の外出規制についても「事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも違法にはならない」としています。
但し、「必ずしも違法にならない」とは、完全に合法というのではなく、労働からの解放という休憩の目的を損なわず、一定の規制を加えることに合理性が認められる場合には自由利用の原則に反しないと言っています。
休憩時間の外出に制限を付けるのであれば、「許可制」より「届け出制」が自由利用の原則から望ましいと言えそうです。

2020.12.28夜勤者の休憩時間について、法令上何時間以上与えないといけませんか

労働基準法第34条において、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を労働時間の途中で与えなければならないことが定められています。

医療の現場では、24時間体制で入院患者の見守り、ケアが必要となります。そのために設けているのが「夜勤」という働き方であり、1か月単位の変形労働時間制を採用し、夜勤者の1日の所定労働時間について8時間を超える時間に設定していることが多いです。その場合の休憩時間数ですが、例えば2交代制で夜勤が16時間勤務の場合だと、8時間×2=2時間必要と考えたくもなりますが、労働基準法では休憩時間数については日勤・夜勤ともに同じであり、16時間勤務の場合であっても「8時間を超える場合は1時間以上」の文言より、業務の途中で1時間与えれば法違反とはなりません。

しかし、夜勤者の作業の能率、健康管理を考えると、まずは休憩をしっかり取らせるよう配慮すべきです。また休憩時間中は労働から解放させる必要があり、休憩時間中の労働者の行動に制約を加えることは禁止されていますが、業務により休憩時間を自由に利用させることができない場合は労働時間と見なし、時間外勤務手当を支給する必要があります。なお、看護協会では16時間夜勤等の長時間勤務の場合、2~3時間の休憩時間の付与が望ましいとしています。

2020.12.2オンコールが労働時間にあたるのか等オンコールの取扱いについて教えてください。

 まず、労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定))。
 そして、オンコール待機中に実際の診療が発生した場合、当該診療に従事する時間は労働時間に該当します。
 オンコール待機時間全体が労働時間に該当するかどうかについては、オンコール待機中に求められる義務態様によって判断する必要があります。
 オンコール待機中に求められる義務態様は、医療機関ごと、診療科ごとに様々であり、呼び出しの頻度がどの程度か、呼び出された場合にどの程度迅速に病院に到着することが義務付けられているか、呼び出しに備えてオンコール待機中の活動がどの程度制限されているか等を踏まえ、オンコール待機時間全体について、労働から離れることが保障されているかどうかによって判断するもので、個別具体的に判断されるものです。

2020.11.26医療機関における労働時間制度の活用についてどのようなものがありますか。

医療機関で活用される労働時間制度については、
(1)通常の労働時間制度における交代制勤務(2交代制、3交代制)
(2)1ヶ月単位の変形労働時間制
をとる方法が一般的です。

(1)「通常の労働時間制制度における交代制勤務(2交代制、3交代制)」とは、法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間。但し、常時10名未満の労働者を使用する保健衛生業の場合は1日8時間、1週44時間。)を前提として、あるいはこれに36協定を導入した上で、その範囲内において、変形労働時間制をとることなく、1日の始業時刻・終業時刻を2区分や3区分し、設定する方法です。
例として、午前7時から午後3時まで、午後3時から午後11時まで、午後11時から午前7時までの勤務の3交代制などです。

(2)「1ヶ月単位の変形労働時間制」とは、労使協定または就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより1ヶ月以内の一定期間(単位期間)を平均して1週当たりの労働時間が40時間(常時10名未満の労働者を使用する保健衛生業の場合は44時間)におさまる場合であれば、単位期間の特定の日または週について、1日もしくは1週の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

1か月単位の変形労働時間制の詳細(運用の手順、給与計算)については厚生労働省のリーフレットを参照ください。

2020.11.19医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続、及びその適切な運用を確保するための環境の整備について教えてください。

 まず、医師の研鑽について、業務との関連性、制裁等の不利益の有無、上司(業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者)の指示の範囲を明確化する手続を講じます。
 例えば、医師が労働に該当しない研鑽を行う場合には、医師自らがその旨を上司に申し出ることとし、当該申出を受けた上司は、当該申出をした医師との間において、当該申出のあった研鑽に関し、①本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理のいずれにも該当しないこと、②当該研鑽を行わないことについて制裁等の不利益はないこと、③上司として当該研鑽を行うよう指示しておらず、かつ、当該研鑽を開始する時点において本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、本人はそれらの業務から離れてよいこと、について確認を行うことが考えられます。
 なお、上司は、業務との関連性を判断するに当たって、初期研修医、後期研修医、それ以降の医師といった職階の違い等の当該医師の経験、担当する外来業務や入院患者等に係る診療の状況、当該医療機関が当該医師に求める医療提供の水準等を踏まえ、現在の業務上必須かどうかを対象医師ごとに個別に判断します。
 手続は、労働に該当しない研鑽を行おうとする医師が、当該研鑽の内容について月間の研鑽計画をあらかじめ作成し、上司の承認を得ておき、日々の管理は通常の残業申請と一体的に、当該計画に基づいた研鑽を行うために在院する旨を申請する形で行うことも考えられます。また、労働に該当しない研鑽を行おうとする医師が、当該研鑽のために在院する旨の申し出を、一旦事務職が担当者として受け入れて、上司の確認を得ることとすることも考えられます。
 次に、これらの手続について、その適切な運用を確保するために次の措置を講ずることが望ましいとされます。
(ア)労働に該当しない研鑽を行うために在院する医師については、権利として労働から離れることを保障されている必要があるところ、診療体制には含めず、突発的な必要性が生じた場合を除き、診療等の通常業務への従事を指示しないことが求められる。また、労働に該当しない研鑽を行う場合の取扱いとしては、院内に勤務場所とは別に、労働に該当しない研鑽を行う場所を設けること、労働に該当しない研鑽を行う場合には、白衣を着用せずに行うこととすること等により、通常勤務ではないことが外形的に明確に見分けられる措置を講ずることが考えられること。手術・処置の見学等であって、研鑚の性質上、場所や服装が限定されるためにこのような対応が困難な場合は、当該研鑚を行う医師が診療体制に含まれていないことについて明確化しておくこと。
(イ)医療機関ごとに、研鑽に対する考え方、労働に該当しない研鑽を行うために所定労働時間外に在院する場合の手続、労働に該当しない研鑽を行う場合には診療体制に含めない等の取扱いを明確化し、書面等に示すこと。
(ウ)上記(イ)で書面等に示したことを院内職員に周知すること。周知に際しては、研鑽を行う医師の上司のみではなく、所定労働時間外に研鑽を行うことが考えられる医師本人に対してもその内容を周知し、必要な手続の履行を確保すること。また、診療体制に含めない取扱いを担保するため、医師のみではなく、当該医療機関における他の職種も含めて、当該取扱い等を周知すること。
(エ)医師本人からの申出への確認や当該医師への指示の記録を保存すること。なお、記録の保存期間については、労働基準法第109条において労働関係に関する重要書類を3年間保存することとされていることも参考として定めること。

詳しくは、以下の二つの通達をご確認ください。
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/8409f492f42ad468a0c15b1e2e6c6c56900ab1c3.pdf
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/49fa4a893745eb8515bd9d3d3786ed6794314276.pdf

2020.11.9医師の研鑽の労働時間該当性に関する考え方等について教えてください。

 まず、所定労働時間内において、医師が、使用者に指示された勤務場所(院内等)において研鑽を行う場合については、当該研鑽に係る時間は、当然に労働時間となります。
 他方、所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者(以下「上司」という。)の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しません。
 しかし、当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われるものであっても、又は診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当するものとなります。
 詳しくは、以下の二つの通達をご確認ください。
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/8409f492f42ad468a0c15b1e2e6c6c56900ab1c3.pdf
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/49fa4a893745eb8515bd9d3d3786ed6794314276.pdf

2020.10.8「所定労働時間」(就業規則)と「病棟勤務時間数」(診療報酬算定:様式9)の考え方について教えてください。

 例えば、日勤時間帯を「9:00~17:00」、夜勤時間帯を「17:00~9:00」とします。
 夜勤時間帯は、労働基準法上の深夜業の「22:00~5:00」を含む時間帯となります。

〇始業時刻が8:30、終業時刻が17:00(休憩60分)の場合
・就業規則上の所定労働時間:7時間30分
・様式9の病棟勤務時間数:8時間30分、日勤帯勤務時間数:8.0時間、夜勤帯勤務時間数:0.5時間
となります。

〇始業時刻が12:30、終業時刻が21:00(休憩60分)の場合
・就業規則上の所定労働時間:7時間30分
・様式9の病棟勤務時間数:8時間30分、日勤帯勤務時間数:4.5時間、夜勤帯勤務時間数:4.0時間
となります。

 休憩や仮眠に充てた時間は病棟勤務時間数に含みますが、
 カンファレンス会議や法令研修以外の研修など病棟外での活動は勤務時間数に含みません。

 労働基準法では所定労働時間が基準になりますので、両者の違いを理解し、
 どちらにおいても基準を満たすようにご注意ください。
 

2020.9.10祝日に働かせたら休日割増賃金を支払わなければなりませんか?

 労働基準法では、休日は、週1日あるいは4週を通じて4日与えなければならず(法定休日)、
この法定休日に労働させる場合は36協定の締結・届出と割増賃金の支払いが必要です。
 法定休日以外の休日であり、労働を免除された日であり、労働させた場合は、その分の賃金(割
増賃金は不要)の支払いが必要となります。

2020.9.10台風による休業でも休業手当が必要ですか?

労働基準法第26条は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中、労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と規定しています。 「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは、使用者が、休業になることを避けるため社会通念上最善の努力をしたかどうか、によって判断されることになります。通常、不可抗力による場合以外は、使用者の責に帰すべき事由に該当すると考えられます。 
具体的には、天災地変の場合や、休電による場合などは、使用者の責めに帰すべき休業とはなりません。台風など、天災地変による不可抗力の場合は、休業手当を支払う必要はありません。この場合、年次有給休暇への振替も考えられますが、強制ではなく、あくまで本人の申し出ないしは、希望により振り替える必要があります。

2020.9.10労働時間について教えてください。

従業員の労働時間は、労働基準法によって制限が規定されています。
1日の労働時間は、8時間まで。1週間の労働時間は40時間までです。
1日の労働時間が6時間を超え8時間以下であれば、45分以上の休憩時間を取らせなければなりませんし。8時間を超えれば60分以上の休憩時間を労働時間の途中でとらせなければなりません。1日または1週間の労働時間の上限を超える場合、労使協定(事業主と労働者代表との書面による協定)を締結しなければなりません。

2020.9.10「休日振替」と「代休」は違うと言われましたが、どう違うのですか?

 「休日振替」とは、あらかじめ休日と定められた日を別の日に振り替え、その代わりに、あらかじめ休日と定められていた日を労働日(出勤日)とすることです。このように、事前に休日振替をした場合は、本来の休日と労働日を入れ替えたことにより、休日労働としての割増賃金の対象にはなりません。(なお、振替を行った結果、新たに労働日となった週において、法定労働時間を超えることとなった場合は、時間外労働としての割増賃金を支払う必要が生じる場合があります。)
 
 「代休」とは、休日労働をさせた後で、その休日労働の代わりに、他の労働日の勤務を免除するものです。「代休」の場合は、休日振替と異なり、事前に休日を労働日とする手続きが採られていないため、その日はあくまで休日のままで、その日に労働させることは休日労働となり、割増賃金の対象となります。

2020.9.10「休日労働」とはどのような場合ですか?

「休日」とは、事業主と従業員との間での労働契約において労働の義務のない日をいいます。労働基準法では、休日は最低1週1日、または4週4日与えなければなりません。
このように労働基準法で定められた休日を「法定休日」といいます。
「休日労働」とは、「法定休日」に従業員に労働させることをいいます。
たとえば、毎週日曜日が事業所での法定休日とすると、週休2日制で土曜日も休日だとしても、日曜日の勤務は「休日労働」ですが、土曜日の勤務は「休日労働」ではない、ということになります。
「休日労働」をさせた場合の割増賃金は労働基準法で35%と決められていますので、
上記の場合は、日曜日に勤務した場合は35%の割増賃金の支払いが必要ですが、
土曜日の休日に勤務した場合は35%の割増賃金の支払いは不要です。しかし、土曜日の休日に勤務した結果、週40時間を超える場合は「時間外労働」となり、25%の割増賃金が必要となります。

2020.8.20所定労働時間と法定労働時間とは何が違うのですか。

労働時間の長さは原則として1日8時間及び1週40時間以内(休憩時間を除く)と法律(労働基準法第32条)で制限されており、この時間を「法定労働時間」と言います。
所定労働時間とは、労働契約で定められた勤務時間(勤務シフト)のことで、具体的には就業規則や雇用契約書で定められた始業時間から就業時間まで(休憩時間を除く)の時間を言います。所定労働時間は、労働基準法で決められた「法定労働時間」の範囲内で、自由に設定することができます。
※例外として、変形労働時間制を採用している場合は、特定の日、週においてあらかじめ1日8時間及び1週40時間を超えて所定労働時間を設定することができます。

4. 労働条件等に関すること②就業規則・給与制度・人事制度

2021.9.29就業規則の周知義務について教えてください。

就業規則は作成しただけでは法的な効果が発生せず、職員へ周知して効果が発生します。この就業規則の周知については、労働基準法第106条において「使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、職員に周知させなければならない」と定められており事業主の義務となっています。
また、この周知義務については、就業規則を新しく作成した場合だけではなく、都度内容を変更した場合においても、変更後の内容を職員に周知させなければならないものとされています。
周知については、次のような方法です。
〇事業所の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること
〇書面を職員へ交付すること。
〇PC等の機器にデジタルデータとして記録し、職員がいつでも見れるようにすること。

2021.7.16賞与は支給日に在籍していることとすることはできますか

就業規則や賃金規程に明記された、賞与の支給対象期間に在職していたが、支給日までに退職している職員には支給しないとすることは可能かとのケースです。
賞与は、過去の一定期間の労務に対する功労褒章的な意味合いと、将来の労働に対する意欲向上や就労の確保といった意味合いを持ちます。
この過去の就労に対して支払わないことが公序良俗違反にならないか、また、退職の自由を制限することとならないかといった問題が考えられます。
前述した賞与の性格が将来の労働への意欲向上や就労の確保といった性格から考えると、在籍条件も合理性があると言えます。また、在籍要件自体が退職を制限しているとまでは言えません。但し、査定退職期間から相当の期間後の支給であったり、本来の支給日が遅延した場合は支給を拒めない可能性が高い思われます。
最近の判例でも、支給日在籍条件は一定の合理性を認め有効とするようになっています。

2021.5.18配置転換を行う場合の留意点について教えてください。

 職務内容や勤務地を、相当の期間にわたって変更することを配置転換(以下、配転という)といい、勤務地の変更を伴う配転を特に転勤といいます。
 使用者が配転を命じるには、労働協約や就業規則によって配転命令権が労働契約上根拠づけられている必要があります。就業規則に配転を命じ得る旨の包括的規定があり、しかもその規定が形骸化しておらず実態として配転が広く行われている場合には、使用者の配転命令権が肯定されると考えられます(労契法7条)。
 ただし、当該労働者について勤務場所を限定する特約が存在する場合にはそちらが優先し(同条但し書き)、その限定範囲を超える転勤には労働者の個別的同意が必要ということになります。そのような勤務地限定の合意・特約は、採用時のほか、採用後にも成立し得ると考えられます。
 本採用の大卒正社員のように、当該企業で長期的にキャリアを形成していく雇用の場合には、勤務地限定同意が認定されにくい傾向にあります(東亜ペイント事件 最二小判昭61.7.14)が、現地採用の労働者(新日本製鐵事件 福岡地小倉支決昭45.10.26)や、採用面接で転勤には応じられない旨を明確に述べ、そのことについて本社から何の留保もなく採用された労働者(新日本通信事件 大阪地判平9.3.24)など、勤務地限定合意が認定される例もあります。
 なお、使用者に配転命令権が認められる場合でも、①配転命令に業務上の必要性が存しない場合(NTT西日本(大阪・名古屋配転)事件 大阪高判平21.1.15)、②配転命令が不当な動機・目的に基づく場合(フジシール事件 大阪地判平12.8.28)、③労働者に通常甘受すべき程度を超える不利益を及ぼす場合(日本電気事件 東京地判昭43.8.31)には、配転命令は権利濫用として無効になります(労契法3条5項)。
 業務上の必要性は、当該配転が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性には限定されず、労働力の適正配置、業務の能率促進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められれば肯定されると考えられます(東亜ペイント事件 最二小判昭61.7.14)。
 また、平成13年に育児介護休業法が改正され、子の養育または家族の介護状況に関する使用者の配慮義務が導入された(法26条)ほか、平成19年制定の労契法でも使用者が仕事と生活の調和に配慮すべきことが規定されている(法3条3項)ことから、近年の裁判例では、配転命令の権利濫用の判断においてこれらの規定を参照し、労働者の私生活上の不利益をより慎重に検討しているものもあります(明治図書出版事件 東京地決平14.12.27)。

2021.4.1年俸制の対象者にも時間外手当は必要ですか

労働基準法は第37条により割増賃金の支払い義務を定め、例外として第41条に管理監督者等の適用除外を受ける者を決めていますが、この41条該当者以外の職員で年俸制の対象者が法定の時間外労働や休日労働、深夜労働を行った場合は、割増賃金を支払わねばなりません。
では、「年俸制の金額には残業代等を含むものとする」と定めることで問題はないでしょうか。この場合、年俸制の金額の中に、割増賃金がいくら入り、何時間分に該当するかが明確になっていなくてはなりません。また、その設定された時間・金額を超えた場合は、不足分は別途支給する必要があります。

2021.2.12退職者への賃金・退職金の支払い時期について教えてください

退職者の金品の返還とその時期については、労基法23条1項において、「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。」と決めています。
これは、迅速に変換しないことが、労働者の足止め策に利用されたり、労働者の生活の困窮をさせない為に早期返還を命じたものです。
実務上、賃金と退職金では取扱いが異なります。
賃金の場合、賃金規程に支払日が決まっていたとしても、上記趣旨から、退職した労働者が請求した日から7日以内に支払う義務があります。
退職金の場合、行政解釈では、通常の賃金と異なり、あらかじめ就業規則等で定められた支払い時期に支払えば足りると解されています。よって退職金の場合は、7日以内に支払う必要はありません。

2021.2.10就業規則の届出に労働組合又は労働者代表の意見の提出がありますが、それは反対する意見であっても届け出は可能ですか

「労基法は法90条において、『労働組合の意見を聴かなければならない』としていますが、労働組合との協議決定を要求するものではなく、当該就業規則についての労働組合の意見を聴けば、法違反とならない趣旨である」と行政解釈上されています。
全く意見に聞く耳を持たず、誠実に意見を聴取したと言えない場合は、その後の労使関係に問題が生じることも考えられますが、労使の合意に基づく労働協約とは異なり、就業規則はその作成が使用者に課されているもので、その内容についても使用者の判断により決定されるものです。
よって、採用することのできない反対意見でであっても意見書として届け出ることは可能です。

2020.11.12正職員6名・パートタイマー4名でも就業規則は必要ですか

「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則を作成し、届け出なければならないとされています(労基法89条)
 この場合の常時10人とは、常用雇用の労働者が10人ということではなく、その事業場に常時何人ぐらいの労働者を使用しているかが判断基準になります。これは、いつでも常にということではなく、大体10人以上いるが、時には10人を下回る場合をいいます。逆に、いつもは10人はいないが、繁忙期には20人になるといった場合は常時10人には当てはまらないと考えられます。雇用形態の差(正職員・パート)は問題とならず、事業場としていつも何人いるかが問題です。つまり正職員6名・パート4名の場合、就業規則の作成義務があるということになります。
 この場合、一部の職員である正職員用の就業規則だけ作成すればいいのではなく、パートタイマーに適用する就業規則も作成する必要があります。正職員用の就業規則をパートタイマーにも適用すれば、法律的にはいいのですが、雇用形態で労働条件(賃金制度・退職金制度等)が異なる場合、それぞれに適した就業規則を別個に作ることが実務上必要になってくると思われます。

2020.9.29就業規則にはどのようなことを記載すればいいでしょうか

就業規則に記載する内容には、「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」があります。
絶対的必要記載事項とは、必ず記載しなければならないもので、勤務時間、休憩、休日、休暇、賃金、退職に関することが当てはまります。
絶対的必要記載事項は次のとおりです。
1.労働時間関係
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合 においては就業時転換に関する事項
2.賃金関係
賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
3.退職関係
退職に関する事項(解雇の事由を含みます。)

相対的必要記載事項とは、会社で独自に定めているもの(退職手当、賞与等の臨時の賃金、安全及び衛生等)があれば、記載しなければならないこととなっています。
相対的必要記載事項は次のとおりです。
1.退職手当関係
適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
2.臨時の賃金・最低賃金額関係
臨時の賃金等(退職手当を除きます。)及び最低賃金額に関する事項
3.費用負担関係
労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項
4.安全衛生関係
安全及び衛生に関する事項
5.職業訓練関係
職業訓練に関する事項
6.災害補償・業務外の傷病扶助関係
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
7.表彰・制裁関係
表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
8.その他
事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項

5. 働き方改革に関すること②年5日の年次有給休暇の確実な取得

2021.8.27時間単位の年休を必要とする職員等が5日分取得した場合、新たに採用した職員などについて10日のうち5日を時季指定してしまうと、自由に所得できる年次有給休暇が無くなってしまうのではと苦慮しています。

確かに年次有給休暇が10日の職員等は5日の時季指定を行った残りの5日分の時間単位年次有給休暇を取得すると全ての年次有給休暇を取得することになります。しかしながら、年次有給休暇の5日の時季指定は職員等から聴取した意見に基づき行うものであること、職員等が自ら時期を指定して取得した年次有給休暇の日数分は時季指定から控除することができるということから対応できるとお考えください。

2021.6.16年5日の年次有給休暇の時季指定については,就業規則に記載する必要がありますか。

休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項であるため、労働者数10人以上の事業場で、時季指定を行う場合はそのことについて就業規則に記載する必要があります。具体的には,時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について定め、所轄労働基準監督署に届出するようにしてください。

2020.11.17年5日の年次有給休暇の確実な取得とは何ですか。

年次有給休暇は、働く方の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。しかし、取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため、労働基準法が改正され、2019年4月から、すべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得されることが義務化されました。

ポイント1:対象者
年次有給休暇が10日以上付与される労働者

ポイント2:年5日の時季指定義務
使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時期を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。

ポイント3:時期指定の方法
使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。また、できる限り労働者の希望に沿った時期指定になるように聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。

ポイント4:時期指定を要しない場合
既に年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時期指定をする必要はなく、また、することもできません。

ポイント5:年次有給休暇管理簿
使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。

ポイント6:就業規則への規定
使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時期指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。

基準日を統一したり、計画表を作成するなど、また仕事はチームで行い休みやすい職場環境を構築するなど休暇取得に向けた環境づくりに取組みましょう。

2020.9.10年休の5日取得義務について休職中の労働者についても取得させる必要がありますか。

例えば年休の基準日から1年間の間ずっと休職中であった場合など、使用者にとって義務の履行が不可能な場合は法違反は問われません。
また基準日から1年間のうち途中から休職した場合や、逆に途中から復職した場合などで、当該1年間から休職期間を除いた残りの期間における労働日が、使用者の指定すべき年休の残日数より少ない場合も義務の履行は不可能となります。
逆に当該残りの期間における労働日が5日以上ある場合は、取得状況について注意しましょう。

2020.9.8Q 年5日の有給休暇の取得は、パートタイマーも対象になりますか。

A 年5日の有給休暇を取得させなければならない労働者とは、有給休暇が10日以上付与される労働者になります。
パートタイマー労働者でも週所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上の労働者
(1年間の所定労働日数が217日以上)は、一般の労働者と同じ有休が付与されますので、
年5日の取得義務があります。
それ以外のパートタイマー労働者でも、所定労働日数に応じて比例付与され、有休が10日以上付与されると、5日の取得義務の対象になります。
10日とは残日数ではなく、1年間に付与される日数をいいます。

4. 労働条件等に関すること③その他(労働条件等)

2020.9.11勤務体制などの労働条件を変更したいと考えています。どんなことに注意しなければならないでしょうか。

労働条件の変更は、就業規則や労働協約によるか、個々の労働者の個別の合意を得ないといけません。労働者の同意のない一方的変更は、労働基準法第2条により無効です。
労働者が労働条件の一方的不利益変更に同意していた場合でも、法令、労働協約、就業規則に違反しているときには、不利益変更の同意は無効ということになります。労働条件の変更を行う際は、「合理性」に配慮しなければならないとされています。
合理性は、次のような要素を総合的に判断して行われることになります。
(1)労働者が被る不利益の程度
(2)事業所の必要性の内容・程度
(3)変更内容自体の相当性
(4)代償措置その他の労働条件の改善状況
(5)労働組合などとの交渉の経緯
(6)同種事項に関する社会一般の状況
(7)特に大きな不利益を被る者への経過措置(激変緩和措置)
これらのことを踏まえて変更の協議を行ってください。

3. 職場の環境整備に関すること③その他(職場の環境整備)

2021.11.25医療従事者の勤務環境改善に向けたICT機器等として、どのようなものがありますか。

 例えば、以下のようなものがあります。
①労働時間管理の適正化・省力化 ・勤務管理ソフト、タイムカード、ICカード
 ・シフト表作成支援ソフト
②医師等の行う作業の省力化
 ・書類作成時間の削減等に資する機器(音声入力ソフト等)
 ・バイタルデータの把握・管理機器 等
 ・医療支援ピクトグラムシステム
③医師の診療行為の補助又は代替
 ・AI問診
 ・遠隔集中治療システム 等
④遠隔医療の実現
 ・オンライン診療システム
 ・遠隔画像診断システム
 ・見守り支援システム 等
⑤チーム医療の推進
 ・医師以外の医療従事者の業務量削減に資するICT機器等(患者の離床センター、見守り装置等)
 ・予診のためのシステム(通信機能付きバイタル測定機器やタブレット等を活用した予診システム等)
 ・Web会議システム
 ・SNS、グループチャット 等
 ・医療支援ピクトグラムシステム
⑥その他
 ・オンライン教育、オンライン学習 等

こちらの報告書事例集が参考になります。

2021.5.19医療勤務環境改善マネジメントシステムを導入する意義について教えてください。

医療勤務環境改善マネジメントシステムとは、各医療機関等において、「医師、看護職、薬剤師、事務職員等の幅広い医療スタッフの協力の下、一連の過程を定めて継続的に行う自主的な勤務環境改善活動を促進することにより、快適な職場環境を形成し、医療スタッフの健康増進と安全確保を図るとともに、医療の質を高め、患者の安全と健康の確保に資すること」を目的として、各医療機関等のそれぞれの実態に合った形で、自主的に行われる任意の仕組みです。
各医療機関等にとって、経営的視点からも、また、「医療の質」向上の視点からも、自らのミッション(使命、存在意義)に基づき、ビジョン(いつまでにどうなっているか⦅「なりたい姿」「ありたい姿」⦆)の実現に向けて組織として発展していくことは非常に重要なテーマです。
そのために不可欠な取組の1つが、医療機関等に勤務する医療スタッフが働きやすい環境を整え、また、職能専門職の集団としての働きがいを高めるよう、「雇用の質」を向上させる取組です。「雇用の質」を向上させる勤務環境改善の取組により、医療スタッフを惹きつけられる施設となるだけでなく、「医療の質」の向上、及び患者満足度の向上へとつながります。

2020.8.20新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置により妊娠中の女性労働者が休業する場合、どのような支援があるのでしょうか。

令和2年5月7日から同年12月31日までの間に新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師または助産師の指導により、休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度(年次有給休暇を除き、年次有給休暇の賃金相当額の6割以上が支払われるものに限る)を整備し、当該有給休暇制度の内容を新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容とあわせて労働者に周知した事業主であって、令和2年5月7日から令和3年1月31日までの間に当該休暇を合計して5日以上取得させた事業主に対して、対象労働者1人当たり有給休暇計5日以上20日未満:25万 *1事業所当たり20人まで以降20日ごとに15万円加算(上限額:100万円)が助成されます。申請期間は令和2年6月15日から令和3年3月1日までとなっております。
支給要件の詳細や具体的な手続、支給申請書のダウンロードはこちらから
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11686.html)お願いします。

5. 働き方改革に関すること③同一労働同一賃金

2021.7.15「均衡待遇」が求められる場合、取組対象労働者(短時間労働者及び有期雇用労働者)の待遇と比較対象労働者(通常の労働者)の待遇に違いがある場合に、その違いは不合理な待遇差であってはならないため、不合理な待遇差であるか否かについて点検・検討する必要があるようですが、その点検・検討の「基本手順」を教えてください。

 不合理な待遇差を点検し、対応策を検討する手順は、基本的には、以下の流れになります。
 ①比較対象労働者との間に違いがある個々の待遇の「性質・目的」を明らかにします。
  ・なぜ、その待遇に関する制度を設けたのか
  ・どのような事象に対してその待遇を支給・付与することとしているのか
  ・その待遇を労働者に支給・付与することにより、どのような効果を期待しているか
  といった観点等から、「性質・目的」の内容を明らかにすることが必要です。
 ②手順①で明らかにした待遇の「性質・目的」を踏まえ、待遇に関連する考慮要素は、3考慮要素の中のどれに当たるかを判断します。
  ※待遇の「性質・目的」によっては、3考慮要素の中で複数の要素が関連する場合があります。
  ※3考慮要素とは、「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」、「その他の事情」です。
 ③手順②で判断をした「考慮要素」に基づき、「違い」が生じている理由を整理し、「違いが不合理ではない」といえるか否かを確認します。
(留意点)
 比較対象労働者と取組対象労働者との間で、待遇に関する決定基準を異なるものとすることは、パートタイム・有期雇用労働法では禁止されていません。例えば基本給について、正職員は能力に応じて支給する職能給、パート職員は職務の内容に応じて支給する職務給というように決定基準を異なるものとしている事例も多く見られます。
 しかしながら、決定基準が異なっているのであれば、そのことが、「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」、「その他の事情」の3考慮要素に基づいて、不合理でないと説明できることが必要です。
 単に「パートだから」とか、「将来の役割期待が異なるので」といった、主観的・抽象的な説明では、不合理でないことを説明するには不十分です。
 また、不合理な待遇差であるか否かは、個々の待遇ごとに判断することが基本ですが、ある待遇が他の待遇との関係で決まっている場合には、それも考慮される場合があります。ただし、その理由について客観的・具体的に説明できるようにしておくことが必要であり、労使で認識を共有しておくことが望ましいです。

2021.7.8同一労働同一賃金について、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間で、①職務の内容あるいは②職務の内容・配置の変更の範囲が異なる場合は、「均衡待遇」であることが求められ、短時間・有期雇用労働者の待遇は、①、②及び③その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、通常の労働者との間に不合理な待遇差のないようにすることが求められるみたいですが、③その他の事情とは、どのようなことですか。

 ③その他の事情とは、「①職務の内容」、「②職務の内容・配置の変更の範囲」以外の事情で、個々の状況に合わせて(考慮すべきその他の事情があるときに)、その都度検討するものです。例えば、成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、労使交渉の経緯は、「③その他の事情」として想定されています。なお、ある待遇が他の待遇との関係で決まっている場合には、それも考慮される場合があります。ある待遇を他の待遇との関係で決めている場合には、その理由について客観的・具体的に説明できるようにしておくことが必要であり、労使で認識を共有しておくことが望ましいです。

2021.6.28同一労働同一賃金について、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間で、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、短時間・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取扱いが禁止され、待遇が通常の労働者と同じ方法で決定される必要がある(均等待遇)みたいですが、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲とは、どのようなことですか。

 まず、①職務の内容とは、「a.業務の内容」と「b.当該業務に伴う責任の程度」のことをいいます。
 「a.業務の内容」について、業務とは職業上継続して行う仕事をいい、業務の内容に違いがあるかは、業務の種類(職種)と、従事している業務のうち中核的業務が実質的に同じかどうかで判断します。なお、業務の種類(職種)とは、看護職、事務職等といった従事する業務のことをいい、中核的業務とは、職種を構成する業務のうち、その職種を代表する中核的なものを指し、職種に不可欠な業務を指します。
 「b.当該業務に伴う責任の程度」とは、業務の遂行に伴い行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等(例えば、管理する部下の人数、職場において求められる役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応等)をいい、当該業務に伴う責任の程度に違いがあるかは、責任の程度が著しく異ならないかどうかで判断します。
 次に、②職務の内容・配置の変更の範囲とは、将来の見込みも含め、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化等(配置の変更を伴わない職務の内容の変更を含む。)の有無や範囲のことをいいます。
 均等待遇は、待遇決定に当たって、短時間・有期雇用労働者が通常の労働者と同じに取り扱われること、つまり、短時間・有期雇用労働者の待遇が通常の労働者と同じ方法で決定されることを指しますが、同じ取扱いのもとで、能力、経験等の違いにより差がつくのは構いません。

2021.6.24パートタイム・有期雇用労働法の、目的や理念、用語の定義について簡単に教えてください。

 この法律は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間・有期雇用労働者の果たす役割の重要性が増大していることに鑑み、短時間・有期雇用労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的としています。
 基本的理念として、短時間・有期雇用労働者及び短時間・有期雇用労働者になろうとする者は、生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業することができる機会が確保され、職業生活の充実が図られるように配慮されるものとされます。
 ここで、用語の定義について簡単に説明しますと、「通常の労働者」とは、いわゆる「正規型」の労働者及び事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者をいいます。また、「短時間労働者」とは、労働契約期間の有期・無期に関わらず、1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者をいい、「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいいます。そして、「短時間・有期雇用労働者」とは、短時間労働者及び有期雇用労働者をいいます。

2021.6.23同一労働同一賃金について、不合理な待遇差の解消にあたり留意すべきことを教えてください。

通常の労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消するにあたっては、基本的に、労使の合意なく通常の労働者の待遇を引き下げることは望ましい対応とはいえません。
また、雇用管理区分が複数ある場合であっても、すべての雇用管理区分に属する通常の労働者との間で不合理な待遇差の解消が求められます。
通常の労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者との間で職務の内容等を分離した場合であっても、通常の労働者との間の不合理な待遇差の解消が求められます。

2021.6.9同一労働同一賃金について、不合理な待遇差の点検・検討手順の全体像を簡単に教えてください。

 同一労働同一賃金について、事業主が不合理な待遇差がないかを点検・検討し、対応策を検討するための望ましい手順の全体の流れは以下のとおりです。
 まず、医療機関内の労働者を職員タイプごとに区分し、それぞれの職員タイプの特徴を「労働契約期間」・「1週間の労働時間」をもとに整理します。これによって、パートタイム・有期雇用労働法の対象となる労働者を雇用しているかを確認します。
 短時間・有期雇用労働者が「いる」場合、「均等待遇」、「均衡待遇」の対象となる短時間・有期雇用労働者を確認します。
 次に、短時間・有期雇用労働者の職員タイプごとに、個々の待遇の「適用の有無」と「決定基準」を整理して、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間での「違い」を確認します。
 そして、個々の待遇ごとに以下の手順で均等・均衡を点検します。
 ①均等待遇の対象となる短時間・有期雇用労働者に対しては、全ての待遇について決定基準が通常の労働者と「同一」であるかを確認します。
 ②均衡待遇の対象となる短時間・有期雇用労働者に対しては、「適用の有無」あるいは「決定基準」に「違い」がある場合には、当該待遇の「性質・目的」を確認・整理し、「性質・目的」に適合する考慮要素を3考慮要素(職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情)の中から特定し、その考慮要素に基づき、「違い」を適切に説明できるかを検討します。
 最後に、均等待遇の場合で待遇の決定基準が異なる場合や、均衡待遇の場合で「違い」が適切に説明できない場合には、是正策を検討します。

2021.6.2同一労働同一賃金の説明義務について教えてください。

2019年4月1日に「短時間・有期雇用労働法(以下、「法律」といいます)」が改正され、同一労働同一賃金について、どのような対応をしているのかを、短時間・有期雇用労働者に対して「説明する義務」が定められました。

説明義務が生じるのは、2つの場合です。
一つ目は、「雇い入れたとき」
二つ目は、「説明を求められたとき」
大切なことは、2つの場合に、説明する内容が異なる、ということです。
1 雇い入れたときの説明(第14条第1項)
①法律で定める説明内容については
・待遇の差別的取扱い禁止(第9条)
・賃金の決定方法(第10条)
・教育訓練の実施(第11条)
・福利厚生施設の利用(第12条)
・通常の労働者への転換を推進するための措置、についてです。
②具体的な説明内容としては、
・賃金制度はどうなっているか
・どのような教育訓練があるか
・どの福利厚生施設が利用できるか
・どのような正職員転換推進措置があるか、などです。
2 説明を求められた際の内容(第14条第2項)
①法律で定める説明内容については
・労働条件の文書交付等(第6条)
・就業規則の作成手続(第7条)
・待遇の差別的取扱い禁止(第9条)
・賃金の決定方法(第10条)
・教育訓練の実施(第11条)
・福利厚生施設の利用(第12条)
・通常の労働者への転換を推進するための措置、についてです。
②具体的には
・どの要素をどう勘案して賃金を決定したか
・どの教育訓練や福利厚生施設がなぜ使えるか、または、なぜ使えないか
・正職員への転換推進措置の決定に当たり何を考慮したか、 などです。
3 説明の方法
短時間・有期雇用労働者に対して説明を行う際には、基本的には「口頭」で行うことで足り、あえて説明用の書面などを作成する必要はありません。
ただし、説明する際には、内容を理解しやすくするために、あわせて就業規則や賃金規程などの資料を用意しておくことが望ましいでしょう。
また、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときに説明を行う場合、個別に説明をしなくても、例えば説明会などを開催して、複数人に対してまとめて説明することも可能です。

2021.5.27パートタイム・有期雇用労働法の、均衡待遇と均等待遇について、簡単に教えてください。

 パートタイム・有期雇用労働法第8条で定める均衡待遇のルールは、簡単に言えば、働く前提条件が異なるならば、その違いに応じて均衡(バランス)のとれた待遇を求めるというものです。
 パートタイム・有期雇用労働法第8条は、「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」と定めています。
 一方、パートタイム・有期雇用労働法第9条で定める均等待遇のルールは、簡単に言えば、就業の実態が同じなのに、パート・有期雇用労働者であることを理由として、待遇について差別的な取り扱いをしてはならないというものです。
 パートタイム・有期雇用労働法第9条は、「事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。」と定めています。

2020.12.24同一労働同一賃金について教えてください

少子高齢化の進展により人手不足が深刻さを増していく中、持続的に成長していくためには、短時間・有期雇用労働者が活躍できる職場環境を整備し、労働者から選ばれる企業となることが大切です。そのためには通常の労働者との不合理な待遇差を解消し、短時間・有期雇用労働者が納得して働ける待遇を実現することが求められます。

そこで2017年3月に働き方会改革実現会議において「働き方改革実行計画」が決定され、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消、いわゆる「同一労働同一賃金」の実現に向けて法整備とガイドラインの整備がスタートしました。

それから2018年6月には「働き方改革関連法」が国会において成立し、関係する法律である「パートタイム労働法」「労働契約法」「労働者派遣法」が改正されました。そして「パートタイム労働法」は「パートタイム・有期雇用労働法」に変更されることになりました。大企業は2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日が施行日となります。

主な改正ポイントは、
・不合理な待遇差を解消するための規定の整備
  その中心となる考え方がいわゆる「均等待遇」と「均衡待遇」になります。両方を実現すること
 が求められます。
・労働者に対する待遇に関する説明義務
  雇入れ時には、実施する雇用管理改善に関する措置の内容、求めがあった場合には、通常の労働者
 との間の待遇差の内容、その理由について説明することが義務化されました。

よって、就業規則や賃金規程を見直すには相応の時間を要しますので、対応は計画的に進めましょう。

1. 労働時間管理に関すること③年次有給休暇

2021.6.22年次有給休暇の申請時に、その利用目的を届けさせることはできますか

原則として、年次有給休暇をどのような目的で利用するかは労働者の自由であるとされています。
よって職員が年休の取得に当たって、利用目的を使用者に届け出る必要はなく、また、職員がこれを届け出なかったことを理由に年休を取得させないとなると違法となります。
ただ、任意であることを前置きして口頭で利用目的を尋ねること、また、事業の運営が妨げられる恐れがあり、使用者の時季変更権の行使が認められるケースの場合、その時季変更権を行使するか差し控えるかの判断材料とするために、年休の使途を尋ねることは問題ないと考えられます。

2021.5.7退職時の年次有給休暇の請求は認めるべきですか

労働基準法第39条4項に、年次有給休暇は労働者の請求する時季に与えないとならないとの規定があります。また、同条4項ただし書には、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に与えることができると「時季変更権」を認めています。
時季変更権の「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、「個別的、具体的に客観的に判断されるべきものであると共に、事由消滅後能う限り速やかに休暇を与えなければならない」と解釈例規されています。
申請日と退職日の関係で、業務の引継ぎができないなど特別な事情があるときは、使用者として、他の時季に与える可能性も出てくるでしょう。但し、退職間際の職員に「時季変更権」を行使する余地はありませんので、法律的には認めざるをえないという結論になります。
職場の実情・業務の引継ぎ等を十分職員に説明し、理解を得ることしかないように思います。

2021.1.151週間の労働日数が変わった場合、有休付与日数はどうなるのですか?

雇用契約の更新・変更等で週の所定労働日数に増減が生じた場合でも、変更後の労働日数に応じた年次有給休暇が付与されるのはあくまで「変更後に迎える最初の基準日」です。
例えば、勤務日数が増えた場合、週の所定労働日数が増えたタイミングで即時に有休を追加する必要はありません
また、週所定労働日数が減った場合でも、既に付与した有休はそのまま付与済みの有休を減らす取り扱いはしません。
有休付与はあくまで「基準日」ベースで行うものですから、こうした処理は不要です。

2020.11.24有給休暇の買い上げはどんな時認められますか

有給休暇の買い上げについては、「年次有給休暇の買い上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である」とされています。
ただし、いかなる時もできないかというと、結果的に消化しきれなかった有給休暇については、限定的に買い上げが認められます。
⓵ 2年の時効により請求できなくなった有給休暇
⓶ 退職時に請求不可能となる未消化有給休暇
しかしながら、⓵⓶の場合であっても、限定的な対応となります、これが恒常的・既成事実化すると、逆に有給休暇の取得を阻害することになります。

2020.11.6年次有給休暇について、1時間単位で取得が可能と聞きました。どのような手続きが必要ですか。

労働基準法第39条は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨から、毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定しています。年次有給休暇は原則1日単位ですが、治療のために通院したり、子どもの学校行事への参加や家族の介護など、労働者のさまざまな事情に応じて、柔軟に休暇を取得できるよう、労使協定の締結により、年5日の範囲内で、時間単位での取得が可能となります(労働基準法第39条第4項)。

時間単位の年次有給休暇制度(以下「時間単位年休」といいます。)を導入する場合には、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則に年次有給休暇の時間単位での付与について定めることが必要です。

そして実際に時間単位年休を導入する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定(労使協定)を締結する必要があります。なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。
労使協定で定める項目は次のとおりです。

【時間単位年休の対象者の範囲】
対象となる労働者の範囲を定めます。仮に、一部の者を対象外とする場合には、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。「育児を行う労働者」など、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。

【時間単位年休の日数】
1年5日以内の範囲で定めます。

【時間単位年休1日分の時間数】
1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてください。
(例)所定労働時間が1日7時間30 分の場合は8時間となります。

【1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数】
2時間単位など1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定めます。

なお、平成31 年4月より、使用者は、法定の年次有給休暇付与日数が10 日以上の全ての労働者に対し、年5日の年次有給休暇を確実に取得させることが必要となっていますが、時間単位年休の取得分については、確実な取得が必要な5日から差し引くことはできませんので、注意が必要です。

就業規則への記載、労使協定例は「働き方・休み方改善ポータルサイト」を参照ください。
https://work-holiday.mhlw.go.jp/holiday/time-unit.html

 

2020.9.10新型コロナウィルス感染により小学校等が臨時休業になり、子どもの世話をするために休暇を取得する場合、どのような支援がありますか。

従業員に法定の年次有給休暇と別に、特別の有給の休暇を取得させた企業に対し、休暇中に支払った賃金全額(1日8,330円(4/1以降に取得した有給休暇は15,000円)が上限)助成する制度があります。令和2年2月27日から9月30日までの間に取得した休暇が対象になります。「小学校休業等対応助成金」

2020.9.10新型コロナウイルス感染症への対応として、対象家族の介護をするために休暇を取得する場合、どのような支援があるのでしょうか。

介護サービスを利用していた家族又は利用しようとしていた家族が、事業所の休業により介護サービスを利用できなくなってしまい、その対応として労働者が当該家族を介護するための特別の有給休暇を設け、仕事と介護の両立支援制度の内容を含めて社内に周知し、当該休暇を合計5日(所定労働日ベース)以上労働者に取得させた場合に支給される助成金制度があります。(両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)「新型コロナウイルス感染症対応特例」)令和2年4月1日から令和3年3月31日までの間に取得した休暇が対象になります。

2020.9.10新型コロナウィルスに関連して年次有給休暇、休業手当、傷病手当金はどの様なケースのときに該当しますか。

新型コロナウィルスに感染しているのか、要請による休業なのか、自主的な休業なのかなど状況により異なってきます。
・年次有給休暇
 感染は不明だが、体調が悪いので病院にいく、少し発熱があるので休みたい等自主的に会社を休む場合は年次有給休暇の取得や病気の休暇制度があればそちらを利用することができます。
・休業手当
 国や県からの休業要請に応じ、また会社と協定を結び休業した場合など、会社が判断して休業を行う場合は「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するので休業手当が支給されます。会社は状況に応じて支払った平均賃金の6割以上の休業手当が、解雇の有無等で異なりますが、「雇用調整助成金」を申請すると全額支給されます。(~6月休業分の申請は9月まで)
・傷病手当金
 実際に新型コロナウィルスに感染し、都道府県知事が行う就業制限により休業する場合は、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日(4日目)から、健康保険から傷病手当金が支給されます。

2020.9.2定年後再雇用者の年休付与日数について

Q 定年退職時に年20日の年次有給休暇を付与されていた場合、定年後に再雇用された際の年次有給休暇の付与は、6ヶ月後に10日付与でよろしいでしょうか?

A 定年後の再雇用にあたっては、継続勤務しているものとみなして、勤続年数を通算することとされています。
 たとえば、正職員として6年6ヶ月以上勤務した職員が定年後再雇用された場合は、定年再雇用時に付与されていた年次有給休暇は、そのまま保持することになり、さらに前年度に消化していない繰越日数がある場合は、そのまま継続して保持することとなります。

2. 健康管理に関すること③腰痛・感染症予防等

2021.2.16労働者である看護師が、入院患者の体位変換・移乗介助で腰痛を発症したと言っていますが、直接の原因なのかはっきりしません。労災補償の対象になるのでしょうか。

平成25年に厚生労働省が作成した「腰痛予防対策リーフレット」において、職場での腰痛により4日以上休業する方は年間4000人以上で、うち社会福祉施設では約1000人、 医療保健業では約350人で合わせて3割を占めている、と記載されており、医療・介護の現場において腰痛予防対策は重要な取り組みの一つです。

労災補償についてですが、厚生労働省では、労働者に発症した腰痛が業務中のものとして労災認定できるかを判断するために、「業務上腰痛の認定基準」を定めています。
その中で、労災の認定要件として、「災害性の原因による腰痛」、「災害性の原因によらない腰痛」、の2種類に区分して、それぞれ労災補償の対象と認定するための要件を定めています。

それぞれの要件の内容、詳細は「業務上腰痛の認定基準」リーフレットを参照ください(こちら

なお、俗にいう「ぎっくり腰」は日常的な動作の中で生じるので、例え仕事中に発症したとしても労災補償の対象とは認められません(例外あり)
また個別の確認については最寄りの都道府県労働局、労働基準監督署へお問い合わせください。

厚生労働省では、「職場における腰痛予防対策指針」において、福祉・医療分野等における看護・介護作業も対象として、腰に負担の少ない介助方法などを示しています。
腰痛予防対策リーフレット「看護・介護作業による腰痛を予防しましょう(社会福祉施設、医療施設事業主向け)」はこちら

2020.8.20最近、腰痛の発生原因に心理社会的要因も関与していることが明らかになってきたという話を聞きました。それについて簡単に教えてください。

腰痛の発生原因における心理社会的要因についてですが、明らかな原因疾患のない非特異的腰痛について、職場でのストレスや、腰痛が悪化することへの不安感が脳機能の不具合を起こし、筋肉の緊張や痛みの過敏化を引き起こすことが、最近の脳科学で明らかになってきているようです。
 Fear-Avoidance model(恐怖回避思考モデル)において、「私の腰痛は決して良くならない」、「この痛みには耐えられない」、「私は痛みに対処できない」などの痛みに対する歪んだ認知(思考)が負のスパイラルを始動し、痛みに対する不安、恐怖からの回避行動(腰を大事にする、腰痛ベルトを常につける、腰に負担がかかる作業はしない、仕事を休むなど)を助長します。そして、不活動が、抑うつ、社会生活への適応障害ももたらし、さらに痛みを遷延化させてしまうのです。
 非特異的腰痛の場合、痛みを楽観的に考え、多少痛くても、身体を動かすことも重要であると言えそうです。
 平成30年度 厚生労働科学研究費補助金 労働安全衛生総合研究事業「労働生産性の向上に寄与する健康増進手法の開発に関する研究(H28 – 労働- 一般- 004)」の成果物として、「職場での腰痛対策の進め方」が、労働生産性の向上に寄与する健康増進手法の開発に関する島津明人氏の研究室ホームページよりダウンロードできますので、ご参考にされてください。
 「職場での腰痛対策の進め方」(https://hp3.jp/wp-content/uploads/2019/06/06.pdf)

2. 健康管理に関すること④その他(健康管理)

2021.5.6衛生委員会について簡単に教えてください。

 労働安全衛生法及び労働安全衛生法施行令に基づき、衛生委員会は常時使用する労働者数50人以上の全業種の事業場で設置が必要です。なお、常時使用する労働者数50人未満の事業場では設置の義務はありませんが、委員会を設けている事業場以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければなりません。

 調査審議事項は以下の通りです。
1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
4. 衛生に関する規程の作成に関すること。
5. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
6. 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
7. 衛生教育の実施計画の作成に関すること。
8. 化学物質の有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
9. 作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。
10. 定期健康診断等の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
11. 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
12. 長時間労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
13. 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
14. 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。

 委員の構成については、以下の通りです。
1 総括安全衛生管理者又は当該事業場において事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者(1名)
2 衛生管理者※
3 産業医※
4 衛生に関し経験を有する労働者※

・委員については、事業者が指名することとされています。
※1以外の委員の半数については、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合(過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づき指名しなければなりません。
・事業者は労働者のうち、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを衛生委員会の委員として指名することができます。
・議長は、1の委員が務めます。
・委員会の構成員の(総)人数については、法令上の定めはありません。事業の規模、作業の実態に即し、適宜決定して差し支えありません。

 その他
1 毎月一回以上開催するようにしなければなりません。
2 開催の都度、委員会における議事の概要を労働者に周知することが必要です。
3 開催の都度、委員会の意見及び講じた措置の内容並びに委員会における議事で重要なものに係る事項を記録し、これを3年間保存しなければなりません。

2021.4.28衛生管理者の選任義務について、簡単に教えてください。

職場において労働者の健康障害を防止するため、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業場専属の衛生管理者を選任しなければなりません。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合で、衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるときは、労働衛生コンサルタントのうち一人については専属でなくても差し支えありません。
選任すべき人数は事業場の労働者数に応じて決められています(※1)。また、衛生管理者に選任されるためには、業種に応じた資格(医療業においては、第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許又は医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント等)が必要です。
「常時1,000人を超える労働者を使用する事業場」、または「常時500人を超える労働者を使用し、かつ法定の有害業務(坑内労働又は労働基準法施行規則第18条各号に掲げる業務)に常時30人以上の労働者を従事させている事業場(以下「有害業務事業場」)」では、衛生管理者のうち、少なくとも一人を専任としなければなりません。なお、法定の有害業務のうち一定の業務(坑内労働又は労働基準法施行規則第18条第1号、第3号から第5号まで若しくは第9号に掲げる業務)を行う有害業務事業場では、衛生管理者のうち一人を衛生工学衛生管理免許所持者から選任しなければなりません。

(※1 事業場労働者数と衛生管理者の選任数)
• 50人以上~200人以下 1人以上
• 200人超~500人以下 2人以上
• 500人超~1,000人以下 3人以上
• 1,000人超~2,000人以下 4人以上
• 2,000人超~3,000人以下 5人以上
• 3,000人超 6人以上

衛生管理者は、
(1)労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
(2)労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
(3)健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること。
(4)労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
等のうち衛生に関する技術的事項の管理を行います。
また、衛生管理者は少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならず、事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければなりません(労働安全衛生規則第11条)。

2021.4.20産業医の選任義務について、簡単に教えてください。

 事業者は、業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、医師のうちから、専門性が確保された産業医を選任し、労働者の健康管理に当たることが義務付けられています(選任すべき数は、常時使用する労働者の数が3,000人以下の場合は1人以上、3,000人を超える場合は2人以上)。
 産業医は、一定規模以下の事業場では、嘱託の者でも構いませんが、労働者1,000人以上、あるいは500人以上の有害業務を行う事業場では、専属の者でなければなりません。
 なお、主な職務は、労働者の健康管理等の産業医が行うべき事項(労働安全衛生規則(以下「安衛則」)第14条第1項各号)のほか、少なくとも毎月1回(一定の場合、少なくとも2か月に1回)作業場等を巡視し、労働者の健康障害を防止するための必要な措置を講ずること(安衛則第15条)等です。
 また、産業医を選任した事業者は、産業医に対し、労働者の健康管理等の産業医が行うべき事項をなし得る権限を与えなければならず(安衛則第14条の4第1項)、さらに、産業医に対し、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な一定の情報を提供しなければならない(労働安全衛生法第13条第4項、安衛則第14条の2)こと等に注意が必要です。

2020.10.2職員の健康管理や健康確保について、何か役立つ情報があったら教えてください。

健康管理や健康確保についての役立つ情報の一つとして、ストレスマネジメントについてご紹介いたします。米国国立職業安全保健研究所(NIOSH)の職業性ストレスモデルによれば、仕事のストレス要因(人間関係や長時間労働、役割上の葛藤など)や、仕事以外の要因(家庭の状況など)、個人的要因(年齢や性格など)によって引き起こされるストレス反応(イライラ感、だるさ、過食など)が持続することで、ストレス関連疾患が発症すると考えられています。
なお、緩衝要因(ストレス反応の発現を抑える要因)は、個人を支える社会的支援(上司・同僚・家族)が含まれ、日ごろから何でも話し合える友人や家族などとの関係を作っておけることが大切です。
 上手なストレス対処法としましては、ストレスに強くなるライフスタイル(運動・スポーツ・睡眠・休養・栄養)や、リラクセーション法(漸進的筋弛緩法・呼吸法・自律訓練法・ストレッチング・ヨガ・ピラティス・つぼマッサージ・入浴・アロマテラピー・音楽など)、相談などがあります。
なお、漸進的筋弛緩法とは、全身の筋肉を弛緩する方法のひとつで、最初に軽く筋緊張をしてから弛緩する方法です。呼吸法とは、腹式呼吸や、メトロノームなどの外的道具を用いるペーシング呼吸などのことです。自律訓練法とは、過緊張した交感神経を沈静化して、逆に副交感神経の活性を高めることで自律神経系のバランスを回復させる効果のある、一種の自己催眠法のことです。
 ストレスに気づくことが、まずはストレス対策の第一歩です。日ごろからリラクセーションなどを取り入れ、自分と環境との関係を見つめる機会を持つことが大切です。また、ご自分での対処が困難な場合は、事業場内外の相談窓口を利用することもご検討ください。

5. 働き方改革に関すること④労働者派遣

2021.7.21同一労働同一賃金の派遣労働者への講ずるべき措置とはどのようなことでしょうか

同一労働同一賃金への対応として、教育訓練・福利厚生・派遣料金・情報提供・派遣先管理台帳の5つの項目における措置です。
①同等の教育訓練の実施
職務に必要な技術や知識を獲得するための教育訓練は、同一の業務を行っている場合に、派遣労働者に対しても同等に実施することが義務付けられました。
②同等の福利厚生施設等の利用
事業所内にある給食施設や休憩室、更衣室などの福利厚生施設について、派遣先の通常の労働者と同等の利用を認められるようになりました。派遣労働者に対して福利厚生施設を使ってはいけないといった差別的な扱いは行ってはいけません。
また、施設だけでなく、福利厚生制度も派遣先の通常の労働者と同じように利用できる配慮が求められています。
③派遣料金の交渉における配慮
派遣先企業は、派遣元企業に対する派遣料金に配慮しなければなりません。均等・均衡な待遇確保に必要な額や労使協定による待遇を考慮し、適正な派遣料金を提示する必要があります。
④派遣元企業への情報提供の配慮
派遣先企業に求められる情報提供は、基本的に待遇を決定する段階で賃金に関わる情報のみです。ただ、今回の改正で派遣元企業からその他の情報の提供を求められた際に対応する配慮義務があります。
※例えば、待遇改善などのために、派遣先企業の労働者や派遣労働者の状況などを知りたいという申し出があれば、対応する必要があります。
⑤派遣先管理台帳の追加事項
派遣労働者ごとに、協定対象派遣労働者であるか否か、派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度を派遣先管理台帳に追加記載しなければなりません。

5. 働き方改革に関すること⑤その他(働き方改革)

2022.3.17医師間の業務整理及びタスク・シフト/シェアで特徴的な好事例はありますか。

 宿日直体制の見直しや、チーム制の導入/奨励のほか、病院総合医の配置があります。
 例えば、第15回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料4の、事例3-3では、「病棟に包括診療医を配置し、包括的な病棟マネジメントを実施。包括診療医は主治医と連携し、かつ多職種協働のチーム医療を推進・管理する要となっている。」という事例があります。

第15回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料4

2022.2.24追加的健康確保措置の面接指導実施医師には、産業医の資格があればなれますか。

面接指導実施医師については、長時間労働の面接指導に際して必要な知見に係る講習を受講して従事することになっており、産業医が面接指導実施医師になる場合も、必要な講習を受講していただく必要があります。

2021.12.16タスク・シフト/シェアを、職種に関わりなく特に推進するものについて教えてください。

 職種毎の専門性に応じて、具体的には下記の項目のタスク・シフト/シェアを推進します。具体例としてヒアリングを踏まえた項目を記載していますが、その他の職種についても、それぞれの職種の専門性に応じて同様にタスク・シフト/シェアを推進します。
 なお、医療安全等の観点から、診療の補助に当たらないものについても、医師が適切に関与することが必要です。
①説明と同意
 具体的には、看護師や診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士等による検査等の説明と同意、薬剤師による薬物療法全般に関する説明、医師事務作業補助者や看護補助者による入院時の説明(オリエンテーション)、等
②各種書類の下書き・仮作成
 具体的には、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるリハビリテーションに関する書類の作成・所見の下書きの作成、医師事務作業補助者による診療録の代行入力、医師事務作業補助者による損保会社等に提出する診断書、特定疾患等の申請書、介護保険主治医意見書等の書類、入院診療計画書や退院療養計画書等診療報酬を算定する上で求められる書類、紹介状の返書などの書類の下書き、等
③診察前の予診等
 具体的には、看護師による診療前の問診や検査前の情報収集(病歴聴取・バイタルサイン測定・トリアージ、服薬状況の確認、リスク因子のチェック、検査結果の確認)、医師事務作業補助者の診察前の予診(医師が診察をする前に、診察する医師以外の者が予備的に患者の病歴や症状などを聞いておく行為)、等
④患者の誘導
 具体的には、看護補助者による院内での患者移送・誘導、診療放射線技師による放射線管理区域内への患者誘導、臨床工学技士の患者の手術室退室誘導、等

こちらの資料が参考になります。

2021.12.6タスク・シフト/シェアの具体的な推進方法について教えてください。

 担当職種の見直しを図ることにより一連の業務の効率化を促すことが重要です。
 全ての医療機関において、労働時間の短縮を進めるためにタスク・シフト/シェアに取り組む必要があります。
 まずは、医療従事者の意識改革・啓発として、管理者向けのマネジメント研修、医師全体に対する説明会の開催や、各部門責任者に対する研修、全職員の意識改革に関する研修等に取り組みます。
 特に、一部の職種のみ、あるいは管理者のみの意識改革ではタスク・シフト/シェアが容易に進まないことに留意する必要があります。
 加えて、医療従事者の技術の向上のために、研修等の機会を作ることが重要です。研修は座学のみでなくシミュレータ等を用いた実技も交え、医療の安全を十分確保できるよう、取り組む必要があります。
 さらに、医療機関でタスク・シフト/シェアされる側である医療従事者の余力の確保のために、ICT機器導入等による業務全体の縮減、現行担当している職種からその他の職種へのタスク・シフト/シェアの推進、一連の業務の効率化と現行担当職種の見直し等を不断に行う必要があります。
 また、安全性を担保しながら取組を進めるために、医療機関においてタスク・シフト/シェア後の事故報告を徹底する等の安全性確保を目的とした改善のための方策についても十分に講じる必要があります。

2021.11.18C-1水準の指定は、あくまでプログラム/カリキュラム内の医療機関における研修期間中の労働時間を年換算した場合に、年間の時間外・休日労働が960時間を超える場合に必要であって、そうでなければC-1水準の指定をとる必要はない。この認識で間違いないでしょうか。

 基本的な認識はご理解のとおりです。(ただし、勤務実態として年間の時間外・休日労働が960時間超となるような場合は、C-1水準の指定が必要になります。)

2021.8.12医師の働き方改革に向けた院内での取組について、例えばどのようなものがありますか。

 例えば、医師の働き方改革に取り組むことを院内に表明し、担当者を置いたり検討チームを立ち上げたりする等体制を整え、医師の労働時間の把握と現状分析を行い、目標や計画を立て、医師の働き方を変えていく具体的な取組を行うなどがあります。
 具体的な取組としては、短時間勤務医師や医師事務作業補助者、特定行為研修修了看護師や助産師の配置等のタスク・シフト/シェアの推進、宿日直の体制(宿日直許可の申請の検討や宿直免除申請の検討を含む)や分担の見直し(各科当直から複数診療科によるグループ当直の導入、オンコールの併用等)、交替(シフト)制勤務や変形労働時間制の導入、主治医制の見直し(主治医制から主治医チーム制、複数主治医制の導入)、土日祝日の病棟業務等は当番医で対応(必要に応じて主治医が対応)、法定休日(完全休日⦅オンコール含め業務対応が一切ない日⦆)を確保する体制の構築、カンファレンスの実施方法の見直し(カンファレンスの勤務時間内の実施やカンファレンス時間の短縮化⦅カンファレンスの目的を明らかにする、司会役を設ける、所要時間をあらかじめ設定する等⦆)、病状説明の勤務時間内の実施に関する患者周知の徹底、診療所との連携(紹介・逆紹介の活性化、診療所の開所日・時間拡大による救急対応の分散、開業医師による病院外来支援等)、ICTを活用した業務の見直し(情報共有ツールの導入、AI問診、音声入力等診療補助機器の導入等)、自己研鑽に関するルールの作成及び周知などがあります。

2021.4.8C水準(2024年4月から施行される診療に従事する勤務医の時間外労働上限規制につき、一定の期間集中的に技能向上のための診療を必要とする場合に、年間(上限として)1,860時間まで時間外・休日労働が認められる水準)のうち、C-2水準の対象となる医療機関の指定要件について教えてください。

 C-2水準は、「医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ」等によれば、医籍登録後の臨床に従事した期間が6年目以降の者であって、先進的な手術方法など高度な技能を有する医師を育成することが公益上必要とされる分野において、指定された医療機関で、一定期間集中的に当該高度特定技能の育成に関連する診療業務を行う場合であり、以下の要件全てに該当することとされています。

① 対象分野における医師の育成が可能であること
 C-2水準の対象として厚生労働大臣が公示(※)する「我が国の医療技術の水準向上に向け、先進的な手術方法など高度な技能を有する医師を育成することが公益上必要である分野」において、C-2水準の対象として審査組織が特定する技能を有する医師を育成するのに十分な教育研修環境を有していることを審査組織において確認する。
※分野の公示は、
・ 高度な技能を有する医師が必要で、
・ 当該技能の習得及びその維持には相当程度の時間、関連業務への従事が必要な分野
という基本的な考え方に基づいて行う。例えば、高度で長時間の手術等途中で医師が交代するのが困難であることや、診療上、連続的に診療を同一医師が続けることが求められる分野が考えられる。
② 36 協定において年 960 時間を超える時間外・休日労働に関する上限時間の定めをする必要があること
 ④の医師労働時間短縮計画(案)に記載された時間外・休日労働の実績及び審査組織の意見を踏まえ、36 協定において年 960 時間を超える時間外・休日労働に関する上限時間の定めが必要と考えられること。
③ 都道府県医療審議会の意見聴取(地域の医療提供体制への影響の確認)
 C-2水準を適用することにより、地域における高度な技能が必要とされる医療の提供体制に影響を与える可能性があることから、地域の医療提供体制への影響及び構築方針との整合性を確認することが適当であり、都道府県は、都道府県医療審議会の意見を聴く。
④ 医師労働時間短縮計画(案)の策定(B・連携B・C-1水準と同じ)
⑤ 評価機能による評価の受審(B・連携B・C-1水準と同じ)
⑥ 労働関係法令の重大・悪質な違反がないこと(B・連携B・C-1 水準と同じ)
 詳しくは、医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめをご確認ください。

2021.3.31C水準(2024年4月から施行される診療に従事する勤務医の時間外労働上限規制につき、一定の期間集中的に技能向上のための診療を必要とする場合に、年間(上限として)1,860時間まで時間外・休日労働が認められる水準)のうち、C-1水準の対象となる医療機関の指定要件について教えてください。

 C-1水準は、「医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ」等によれば、臨床研修医及び原則として日本専門医機構の定める専門研修プログラム/カリキュラムに参加する専攻医であって、予め作成された研修計画に沿って、一定期間集中的に数多くの診療を行い、様々な症例を経験することが医師(又は専門医)としての基礎的な技能や能力の修得に必要不可欠である場合であり、以下の要件全てに該当することとされています。

① 都道府県知事により指定された臨床研修プログラム又は日本専門医機構により認定された専門研修プログラム/カリキュラムの研修機関であること
② 36 協定において年 960 時間を超える時間外・休日労働に関する上限時間の定めをする必要があること 「適正な労務管理」(※1)と「研修の効率化」(※2)が行われた上で、④の医師労働時間短縮計画(案)に記載された時間外・休日労働の実績及び指定申請の際に明示されたプログラム・カリキュラムの想定労働時間(プログラム全体及び各医療機関における時間)を踏まえ、36 協定において年 960 時間を超える時間外・休日労働に関する上限時間の定めが必要と考えられること。
(※1)「適正な労務管理」(労働時間管理をはじめとした労働関係法令に規定された事項及び医療法(昭和 23 年法律第 205 号)に規定することとしている追加的健康確保措置の実施)は、④の医師労働時間短縮計画(案)の記載内容及び⑤の評価機能による評価結果により、都道府県知事が確認する。
(※2)「研修の効率化」(単に労働時間を短くすることではなく、十分な診療経験を得る機会を維持しつつ、カンファレンスや自己研鑽などを効果的に組み合わせるに当たり、マネジメントを十分に意識し、労働時間に対して最大の研修効果を上げること)は、地域医療対策協議会等の意見を聴いた上で、④の医師労働時間短縮計画(案)の記載内容により、都道府県知事が確認する。
③ 都道府県医療審議会の意見聴取(地域の医療提供体制への影響の確認)
C-1水準を適用することにより、地域における臨床研修医や専攻医等の確保に影響を与える可能性があることから、地域の医療提供体制への影響を確認することが適当であり、都道府県は、都道府県医療審議会の意見を聴く。なお、地域医療対策協議会においても協議することとする。
④ 医師労働時間短縮計画の策定(B・連携B水準と同じ)
⑤ 評価機能による評価の受審(B・連携B水準と同じ)
⑥ 労働関係法令の重大・悪質な違反がないこと(B・連携B水準と同じ)

詳しくは、医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめをご確認ください。

2021.3.24連携B水準(2024年4月から施行される診療に従事する勤務医の時間外労働上限規制につき、地域医療提供体制の確保のために他の医療機関に派遣され、当該副業・兼業先での労働時間と通算した時間外・休日労働が年960時間を超えざるを得ない場合に通算の上限を年1,860時間とする水準)の対象となる医療機関の指定要件について教えてください。

「医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ」等によれば、以下の要件全てに該当することとされています。

① 医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を確保するために必要な役割を担う医療機関であること
(例)大学病院、地域医療支援病院等

② 36 協定においては年 960 時間以内の時間外・休日労働に関する上限時間の定めをしているが、副業・兼業先での労働時間を通算すると、時間外・休日労働が年 960時間を超えることがやむを得ない医師が勤務していること
 ④の医師労働時間短縮計画(案)に記載された時間外・休日労働の実績及び③の都道府県医療審議会の意見を踏まえ、副業・兼業により時間外・休日労働が年 960 時間を超えることがやむを得ない医師が勤務すると考えられること。
 ※ なお、当該医療機関内でどの医師が副業・兼業によりやむを得ず長時間労働となるのかについては、予定される副業・兼業の内容を踏まえ、特定する。医療機関は該当する医師に対して追加的健康確保措置を適切に実施するためにも、当該医師が明確となるように管理する必要がある。

③ 都道府県医療審議会の意見聴取(地域の医療提供体制の構築方針との整合性)(B水準と同じ)

④ 医師労働時間短縮計画(案)の策定(B水準と同じ)

⑤ 評価機能による評価の受審(B水準と同じ)

⑥ 労働関係法令の重大・悪質な違反がないこと(B水準と同じ)

2021.3.10B水準(2024年4月から施行される診療に従事する勤務医の時間外労働上限規制につき、地域医療提供体制の確保の観点から必須とされる機能を果たすために、当該医療機関における時間外・休日労働が年960時間を超えざるを得ない場合に上限を年1,860時間とする水準)の対象となる医療機関の指定要件について教えてください。

 「医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ」等によれば、以下の要件全てに該当することとされています。

① 医療機能が以下の類型のいずれかに該当すること
 対象となる医療機能は、以下のとおりとする。

 ◆「救急医療提供体制及び在宅医療提供体制のうち、特に予見不可能で緊急性の高い医療ニーズに対応するために整備しているもの」・「政策的に医療の確保が必要であるとして都道府県医療計画において計画的な確保を図っている「5疾病・5事業」」双方の観点から、
ⅰ 三次救急医療機関
ⅱ 二次救急医療機関 かつ 「年間救急車受入台数 1,000 台以上又は年間での夜間・休日・時間外入院件数 500 件以上」 かつ「医療計画において5疾病5事業の確保のために必要な役割を担うと位置付けられた医療機関」
ⅲ 在宅医療において特に積極的な役割を担う医療機関
ⅳ 公共性と不確実性が強く働くものとして、都道府県知事が地域医療提供体制の確保のために必要と認める医療機関
(例)精神科救急に対応する医療機関(特に患者が集中するもの)、小児救急のみを提供する医療機関、へき地において中核的な役割を果たす医療機関

 ◆特に専門的な知識・技術や高度かつ継続的な疾病治療・管理が求められ、代替することが困難な医療を提供する医療機関
(例)高度のがん治療、移植医療等極めて高度な手術・病棟管理、児童精神科等

② 36 協定において年 960 時間を超える時間外・休日労働に関する上限時間の定めをすることがやむを得ない業務が存在すること
 ④の医師労働時間短縮計画(案)に記載された時間外・休日労働の実績及び③の都道府県医療審議会の意見を踏まえ、36 協定において年 960 時間を超える時間外・休日労働に関する上限時間の定めをすることがやむを得ない業務があると考えられること。

 ※ なお、当該医療機関内で医師のどの業務がやむを得ず長時間労働となるのかについては、36 協定締結時に特定する。したがって、当該医療機関に所属する全ての医師の業務が当然に該当するものではなく、医療機関は、当該医療機関がB水準の対象医療機関として指定される事由となった「必須とされる機能」を果たすために必要な業務が、当該医療機関におけるB水準の対象業務とされていることについて、合理的に説明できる必要がある。

③ 都道府県医療審議会の意見聴取(地域の医療提供体制の構築方針との整合性)
 B水準を適用することが地域の医療提供体制の構築方針(医療計画等)と整合的であること及び地域の医療提供体制全体としても医師の長時間労働を前提とせざるを得ないことについて、都道府県は、都道府県医療審議会の意見を聴く。その際、医療機関の機能分化・連携等を進めることによる将来の地域医療提供体制の目指すべき姿も踏まえることが必要であり、地域医療構想調整会議における、医療計画のうち地域医療構想の達成の推進のための協議状況を勘案し、地域医療構想との整合性を確認することが適当である。また、地域の医療提供体制は、地域の医師の確保と一体不可分であるため、地域医療対策協議会における議論との整合性を確認することが適当である。このため、実質的な議論は、都道府県医療審議会に設けられた分科会や地域医療対策協議会等の適切な場において行うことを想定している。

④ 医師労働時間短縮計画(案)の策定
 B水準は、医療機関内のマネジメント改革を進めてもなお、地域に必要な医療提供体制の確保のためにA水準を超えざるを得ない場合に適用される水準であることから、追加的健康確保措置の実施体制を整備しつつ、計画的に労働時間短縮に取り組む必要がある。このため、各医療機関は、医師を含む各職種が参加して医師労働時間短縮計画(案)を策定し、都道府県に提出する。その上で、PDCA サイクルに基づき、当該計画を少なくとも年1回点検し、必要な改善を行うことを含め、労働時間短縮に取り組む。

⑤ 評価機能による評価の受審
 医療機関における追加的健康確保措置や労務管理の実施状況、労働時間の実績や労働時間短縮に向けた取組状況等について、過去3年の間に評価機能による評価をあらかじめ受けていることを都道府県において確認する。都道府県は、その評価結果を踏まえ、B水準の対象医療機関の指定を行う。

⑥ 労働関係法令の重大・悪質な違反がないこと
 医療機関は事業者として労働関係法令の遵守が求められる。特に、B水準の対象医療機関は、例外的に医師の長時間労働が許容されることから、より適切な労働時間管理等が求められる。このため、労働時間に関する労働基準法(昭和 22 年法律第49 号)及び賃金の支払いに関する最低賃金法(昭和 34 年法律第 137 号)の各規定に違反したことにより、過去1年以内に送検され、公表されたことがある場合には、長時間労働が例外的に許容される医師を雇用する雇用主として不適格であるとし、B水準の対象医療機関としての指定を認めないこととする。

2021.3.9勤務環境改善マネジメントシステムについて教えてください。

医師の働き方改革に向けて、勤務環境の改善を図り、健康で安心して働くことができる快適な職場づくりを支援しています。センターでは、「医療勤務環境改善マネジメントシステム」の導入を支援し目標達成のサポートを行っています。

「勤務環境改善マネジメントシステム」は7つのステップで区分されています。

ステップ1【方針表明】:トップによる取組みの方針を周知

・危機感(切迫感)、問題意識を高め、全員で共有します。

ステップ2【体制整備】:多職種による継続的な体制

ステップ3【現状分析】:客観的な分析により課題を明確化

・改革推進のために使命感をもって取組むメンバーでチームを結成します。

ステップ4【目標設定】:ミッション・ビジョン・現状から目標設定

・目指すべき目標、改革のビジョンと戦略を明確にし、組織内に普及させ周知徹底し理解と賛同を得ます。

ステップ5【計画策定】:目標達成のための実施事項を決定

・ビジョンを実行に移す人々に権限を付与し、改革しやすい環境を整える。

ステップ6【取組みの実施】:1つ1つ着実で継続的な実践

・短期的な成果を計画的に生み出し、認知し、評価する。

ステップ7【評価・改善】:成果を測定し、次のサイクルにつなげる

・元に戻らないように変革を進め、油断せず推進し、新たな仕組み、制度を習慣化し、文化を醸成する。

※経営トップによる積極的な関与に加え、成功のポイントは、最初は容易なものから取組んで達成感を味わうことで継続につなげることです。

◇医師事務作業補助者の活用 ◇緊急時を除く時間外の病状説明の取りやめ ◇複数主治医制 ◇完全休日 ◇多様な勤務形態 ◇地域の医療機関との連携 etc 好事例を積み重ね、魅力ある職場づくりを目標に働き方改革を進めていきましょう。

2021.3.4A水準(2024年4月から施行される診療に従事する勤務医の時間外労働上限規制について、年間の時間外・休日労働の上限を960時間以下とする水準)を超える医師のいる医療機関に、今後策定義務が課されるとされる、医師労働時間短縮計画のイメージについて教えてください。

例えば、以下のようなものです。

 

△〇×病院 医師労働時間短縮計画(イメージ)

 

計画期間

 

令和〇年〇月~令和6年3月末

 

対象医師

 

△△科医師、□■科医師

 

労働時間数

 

△△科医師

年間の時間外・休日労働時間数 前年度実績 当年度目標 計画期間終了年度の目標
平均 〇時間△分 〇時間△分 〇時間△分
最長 〇時間△分 〇時間△分 〇時間△分
960時間超~1,860時間の人数・割合 〇人・33% 〇人・20% 〇人・10%
1,860時間超の人数・割合 〇人・5% 〇人・3% 〇人・0%

 

□■科医師

年間の時間外・休日労働時間数 前年度実績 当年度目標 計画期間終了年度の目標
平均 〇時間△分 〇時間△分 〇時間△分
最長 〇時間△分 〇時間△分 〇時間△分
960時間超~1,860時間の人数・割合 〇人・20% 〇人・10% 〇人・0%
1,860時間超の人数・割合 〇人・0% 〇人・0% 〇人・0%

 

労務管理・健康管理

 

【労働時間管理方法】

前年度の取組内容 出勤簿による自己申告
当年度の取組目標 出退勤管理に関してICカード導入
計画期間中の取組内容 引き続きICカードにより管理

 

【宿日直許可基準に沿った運用】

前年度の取組内容 未許可
当年度の取組目標 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第23条の宿日直許可の取得手続を行う
計画期間中の取組内容 引き続き宿日直許可に基づき適切に取り組む

 

【医師の研鑚の労働時間該当性を明確化するための手続等】

前年度の取組内容 特に対応なし
当年度の取組目標 医師の研鑽に関して、事業場における労働時間該当性を明確にするための手続を周知し、環境の整備を管理する
計画期間中の取組内容 引き続き手続を周知し適切に取り組む

 

【労使の話し合い、36協定の締結】

前年度の取組内容 労使間の協議の場として、労働時間等設定改善委員会を月1回開催する

36協定を当該事業場の労働者(パートやアルバイト等も含む)の過半数で組織する労働組合(過半数組合)と協議して締結し、届け出た36協定は医局内に掲示する

当年度の取組目標 引き続き

労使間の協議の場として、労働時間等設定改善委員会を月1回開催する

36協定を当該事業場の労働者(パートやアルバイト等も含む)の過半数で組織する労働組合(過半数組合)と協議して締結し、届け出た36協定は医局内に掲示する

計画期間中の取組内容 引き続き

労使間の協議の場として、労働時間等設定改善委員会を月1回開催する

36協定を当該事業場の労働者(パートやアルバイト等も含む)の過半数で組織する労働組合(過半数組合)と協議して締結し、届け出た36協定は医局内に掲示する

 

【衛生委員会、産業医等の活用、面接指導の実施体制】

前年度の取組内容 ・衛生委員会を月1回開催する

・健康診断を年1回以上実施する

・産業医を1人選任する

当年度の取組目標 引き続き

・衛生委員会を月1回開催する

・健康診断を年1回以上実施する

・産業医を1人選任する

計画期間中の取組内容 引き続き

・衛生委員会を月1回開催する

・健康診断を年1回以上実施する

・産業医を1人選任する

 

意識改革・啓発

 

【管理者マネジメント研修】

取組の実績 特に実績なし
取組の目標 ・国の実施する病院長向けの研修会に病院長が参加する

・診療科長等向けに管理者のマネジメント研修を年1回開催し、受講を促す

 

タスク・シフト/シェア

 

【看護師】

取組の実績 特に実績なし
取組の目標 特定行為研修を受講する看護師を〇名以上に増加させる

 

【医師事務作業補助者】

取組の実績 医師事務作業補助者〇人体制で医師の具体的指示の下、診療録等の代行入力を行う
取組の目標 医師事務作業補助者〇人体制に増員し、医師の具体的指示の下、診療録等の代行入力を行う

 

医師の業務の見直し

 

【日当直の体制や分担の見直し】

取組の実績 従来は各診療科毎の日当直体制
取組の目標 各診療科毎の日当直体制ではなく、日当直人数を交代で1日当直当たり2人体制とし、日当直しない診療科についてはオンコール体制とする

 

その他の勤務環境改善

 

【ICTその他の設備投資】

取組の実績 未導入
取組の目標 音声入力システムを導入して、カルテの一部を自動作成する

 

策定プロセス

 

各職種から各代表1名が参画する勤務環境改善委員会を3ケ月に1回開催し、この計画の検討を行い、策定した。策定されたこの計画は、医局の他、各職種の職場に掲示する。

 

※ 令和2年度 医療勤務改善マネジメントシステム普及促進等事業 多職種対応! 医療機関の働き方改革セミナー 未来へつなぐ医療を支えるチームビルディング 行政説明資料より作成

2021.2.18「労働時間」の定義について教えてください

労働基準法には、「労働時間」の定義については、直接触れていません。

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、

・労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示または黙示の明示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。

・労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されます。

・次のアからウのような時間は、労働時間として取り扱うことになります。

ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

イ 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)

ウ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

※院内で緊急時に備えて待っている時間(手待ち時間)、業務に必要な準備行為、清掃等は労働時間になります。診療開始時刻が始業時間ではありません。

※研修・教育、会議・委員会への出席においても強制・命令の場合や、任意の出席でも欠席を不利益に取扱う場合は、労働時間となります。

2021.2.15なぜ、(医療機関の)働き方改革が必要なのでしょうか?

 背景にあるのは、日本の人口構造の変化です。日本の人口は近年減少局面を迎えており、2065年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率(65歳以上人口割合)は38%台の水準になると推計されています。つまり、生産年齢人口(15~64歳)がどんどん少なくなってくる(2065年には51%台)と推計されています。ここに対応しなければならないという危機感から始まっているのが働き方改革です。
 労働力人口(働き手)が少ない社会を維持するためには、女性や高齢者等の皆様の活躍が必要であり、制約要因(いわゆる正社員の長時間かつ硬直的な労働時間や、いわゆる非正規社員の低賃金と不安定な雇用等)をなくして、多様な働き方を認める方向に変えていこうという発想の下で始まりました。
 働き方改革推進法の理念(目指しているもの)は、古い働き方から新しい働き方への移行を推進すること等です。
 古い働き方とは、一部の職員の長時間労働ですべてを解決したり、長時間労働できない人を労働市場から排除したりする働き方などのことです。この働き方は、人が無尽蔵に供給されうる「人口増加社会」には効率的であったとされます。
 しかし、日本の人口構造が変わり、長時間に対応できる人だけが働くというやり方ではなく、一人ひとりの状況に応じた多様な働き方で労働力を最大限に活かすことが求められています。そこで、法規制によって新しい働き方の方へどんどん促進していこうという発想で、働き方改革が進んでいます。
 つまり、時代の変化に対応するために、働き方改革をする必要があるというわけです。縦割りから連携へ、多職種・他機関の地域内での協働等、少ない労働力でパフォーマンスを発揮する働き方へのシフトが必要になってきます。また、一般に、医療は人手が必要な産業であるといわれますが、働きがいのある、魅力ある職場にしていくことによって、人手を確保し続け、医療を未来に繋げていくためにも、働き方改革が重要です。

1. 労働時間管理に関すること⑤その他(労働時間管理)

2022.3.17客観的な労働時間管理システムの導入について、何か好事例等ありますでしょうか。

 例えば、第15回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料4の、事例1-1①では、医師向けの勤怠管理システムとして、位置情報によって「業務」、「自己研鑽」が結びついており、勤務時間管理の詳細化を行うものや、令和2年度 医師等医療従事者の勤務環境改善の推進にかかるICT機器等の有効活用に関する調査・研究の事例集の、事例2では、既に他職種において導入している勤怠管理システム(変形労働時間制にも対応)を医師に拡張した事例などが掲載されており、参考になります。

第15回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料4
令和2年度 医師等医療従事者の勤務環境改善の推進にかかるICT機器等の有効活用に関する調査・研究の事例集

2022.3.3宿日直許可について、土日に同じ出張医が日直・宿直に続けて入っていて許可された事例はありますか。

いきサポに掲載している「医療機関の宿日直許可に係る資料(参考事例)」の4ページの一番下の事例をご参照下さい。

こちらから。

2022.1.20個人病院の院長が、知合いの病院長に頼まれて、通常の診療や宿直勤務に就く場合に気を付けることは何でしょうか。

 院長は、通常、開業医として事業主の立場であるため、労働時間制度の適用外となりますが、他の病院に雇用されて、労働者として働く場合は、この時間は、通常の医師と同様に管理する必要があります。
 例えば、この場合、週40時間は超えなくても、1日8時間を超える場合には、36協定を締結しておくことが必要となり、通常賃金にプラスして、割増賃金(法定超え、深夜時間)の支払いも必要となります。

2022.1.20副業・兼業を行う医師について、本務先で週1回宿直し、副業・兼業先でも同一週に1回宿直することを想定していますが、これは本務先、副業・兼業先それぞれの宿日直許可の運用に当たり、週1回という宿直の要件に抵触しますか。

 本務先 、兼業先の使用者からの労基法第41条第3号(労基則第23条)に基づく許可の申請について、申請事業場における宿日直勤務の態様が、各々、昭和22年9月12月付け発基17号等に示す許可基準に掲げられている条件を満たしていると認められる場合は、いずれも許可されます。
 一方、労働者が、複数の使用者の下で、各使用者が許可を受けた宿日直勤務に従事する場合、当該勤務に関しては労基法上の労働時間規制の適用が除外されることから、ややもすれば、 同一労働者が短期間の間に宿日直勤務に頻繁に従事することとなり、通常業務と相まって事業場に長時間にわたり拘束されることにつながること等が懸念されます。そのため、複数の使用者の下で、特定の労働者が許可を受けた宿日直勤務に従事している、又は従事することが予定されている場合には、当該労働者が頻繁に労働時間規制の適用が除外されることとなる宿日直勤務に従事することとならないよう、体制等について配慮してください。

2022.1.6副業・兼業の場合に労働時間を通算しない場合とは、どのような場合ですか。

 ①労働基準法が適用されない場合や、②労働基準法は適用されても労働時間規制が適用されない場合に、その時間は通算されません。
 ①とは、フリーランスや独立事業者等の「労働者」に該当しない場合です。②とは、農業、畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者(使用者が行政官庁の許可を受けたもの。なお、断続的労働の一態様が、「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」)、高度プロフェッショナル制度適用者等です。
 なお、36協定により延長できる時間の限度時間、36協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限については、個々の事業場における36協定の内容を規制するものであるため、それぞれの事業場における延長時間を定めます(それぞれの事業場における時間外労働が36協定に定めた延長時間の範囲内であるか否かについては、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とは通算されません)。
 また、休憩・休日・年次有給休暇については、労働時間に関する規定ではないため、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間は通算されません。

2021.9.30自院(自らの事業場)の法定休日に他院(他の使用者の事業場)において副業・兼業が行われた場合、法定休日を確保したことになりますか。

 労働基準法第38条第1項により通算されるのは労働時間に関する規定であり、休日に関する規定は通算されないため、労働者が自らの事業場の法定休日に他の使用者の事業場において副業・兼業を行った場合においても、自らの事業場における法定休日は確保したことになります。
 なお、労働者が他の使用者の事業場において、自らの事業場の法定休日に労働を行った場合、当該他の使用者の事業場においては所定労働時間又は所定外労働時間となり、自らの事業場においては、自らの事業場における法定休日であったとしても、自らが指示した労働ではないため、(自らの事業場の労働時間と通算する場合、)他の使用者の事業場における所定労働時間又は所定外労働時間として取り扱うこととなります。
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&Aより)

2021.9.162024年4月以降を見据えた、複数医療機関に勤務する医師の労働時間管理方法の例について教えてください。

 労働基準法において、労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算することとされており、労働基準法の時間外労働の上限規制が適用される労働者については、副業・兼業先の労働時間も含めて、時間外・休日労働が上限を下回っている必要があります。
 そのため、副業・兼業を行う医師がいる場合、当該医師の「自院での労働時間」について自院で36協定により定めた時間を超えないようにする義務があるほか、「自院での労働時間」と医師からの自己申告等により把握した「副業・兼業先での労働時間」も通算した上で、時間外・休日労働の上限を超えないようにする義務があります。
 また、連続勤務時間制限、勤務間インターバル、代償休息等の追加的健康確保措置(2024年4月より)についても、時間外労働の上限規制と同様、副業・兼業を行う医師がいる場合、当該医師の「自院での労働時間」と医師からの自己申告等により把握した「副業・兼業先での労働時間」を通算した上で実施する義務(連携 B・B・C-1・C-2水準)又は努力義務(A 水準)とされます。
 医療機関において雇用する医師が副業・兼業を行っていることを把握している場合は、医師の自己申告等により、労働時間数の見込みや実績について把握する必要があります。また、許可制・届出制でない場合でも、本人からの自己申告を促し、申告に基づき把握した、副業・兼業先の労働時間を通算して管理する必要があります。
 以上を踏まえ、複数医療機関に勤務する医師の労働時間管理方法の例は以下のとおりです。
①主たる勤務先(主に大学病院を想定)は派遣先における勤務を含めて、時間外・休日労働の上限、連続勤務時間制限、勤務間インターバルを遵守できるようなシフトを組むとともに、主たる勤務先・派遣先・個人の希望に基づく副業・兼業先でのそれぞれの労働時間の上限(通算して時間外・休日労働の上限規制の範囲内)を医師との話し合い等により設定しておく。
②医師個人の希望に基づく副業・兼業については、上記のシフト・上限を前提に連続勤務時間制限、勤務間インターバルを遵守できるように副業・兼業先の勤務予定を入れ、自己申告する。
※①・②のシフト・予定は、主たる勤務先及び副業・兼業先で突発的な業務が発生しても、あらかじめ上限規制の範囲内で設定した労働時間の上限を遵守できるよう、ゆとりをもって設定する。
③副業・兼業先で突発的な業務の発生等により予定していた時間より長く勤務してしまった場合には、適切な面接指導の実施、代償休息の付与等の観点から、随時、自己申告する。
④ただし、あらかじめ設定した上限の範囲内で労働している場合であって、
 ・ (B・連携B・C水準適用で毎月面接指導が組み込まれている医師については)代償休息が発生しない場合
 ・ それ以外の医師については、代償休息が発生しない、かつ、月の時間外・休日労働が100時間以上になるおそれがない場合
には、翌月に1か月分まとめての自己申告でもよい。
(参考資料:医師の勤務実態把握マニュアル

2021.9.2副業・兼業につき、簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)について教えてください。

 副業・兼業の日数が多い場合や、自院と副業・兼業先の双方で所定外労働がある場合などにおいては、労働時間の申告等や労働時間の通算管理において、労使双方の手続上の負荷が高くなることが考えられます。
 管理モデルは、そのような場合等において、労使双方の手続上の負荷を軽くしながら、労働基準法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる方法で、具体的な方法は以下のとおりです。
① 副業・兼業の開始前に、
 (A)当該副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者(以下「使用者A」といいます。)の事業場における法定外労働時間
 (B)時間的に後から労働契約を締結した使用者(以下「使用者B」といいます。)の事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)
を合計した時間数が時間外労働の上限規制である単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内(医師は2024年3月31日まで上限規制は適用されず、それ以降の取扱いは今後省令で定めることとされています)において、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定する。
② 副業・兼業の開始後は、各々の使用者が①で設定した労働時間の上限の範囲内で労働させる。
③ 使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払う。
 これにより、使用者Aと使用者Bは、副業・兼業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、他の使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく労働基準法を遵守することが可能となります。
 管理モデルにおける労働時間の通算の順序は、労働時間の通算の原則的な順序と異なり、
① A事業場における所定労働時間+A事業場における所定外労働時間(A法定内所定外労働時間・A法定外所定外労働時間)の上限
② B事業場における労働時間(B所定労働時間+B所定外労働時間)の上限
となります。
 なお、A事業場において、所定労働時間と所定外労働時間を合計しても法定外労働時間が発生しないような場合に管理モデルを利用する場合であって、B事業場において、
・ 使用者Bが、副業・兼業を行う労働者のA事業場における日ごとの労働時間を把握しており、
・ A事業場における日ごとの労働時間とB事業場における労働時間を通算しても法定労働時間の枠に収まる部分が明確となっている
場合には、使用者Bは、その通算して法定労働時間内に収まる部分の労働時間について、割増賃金を支払わないこととすることは差し支えありません。
詳しくは、以下の資料が参考になります。
副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A

2021.8.30自院で雇用されており、かつ、副業・兼業先においても雇用される場合には、労働基準法における労働時間等の規定の適用はどうなりますか。原則的な労働時間の通算方法の考え方を教えてください。

 労働者がA事業場でもB事業場でも雇用される場合には、原則として、その労働者を使用する全ての使用者が、A事業場における労働時間とB事業場における労働時間を通算して管理する必要があります(労働基準法(以下「労基法」)第38条第1項、労働基準局長通達(昭和23年5月14日基発第769号))。
 労働時間を通算した結果、法定労働時間(労基法第32条、第40条)を超えて労働させる場合には、使用者は、自院で発生する法定時間外労働について、あらかじめ36(サブロク)協定の締結・届出の必要があります。
 また、使用者は、労働時間を通算して法定労働時間を超えた時間数が、労基法第36条第6項第2号及び第3号に定める時間外労働の上限規制(いわゆる、単月 100 時間未満、複数月平均 80 時間以内の要件)の範囲内(医師は2024年3月31日まで上限規制は適用されず、それ以降の取扱いは今後省令で定めることとされています)となるようにする必要があります。
 加えて、使用者は、労働時間を通算して法定労働時間を超えた時間数のうち自ら労働させた時間について、割増賃金(労基法第37条第1項)を支払う必要があります。
 これらの労基法上の義務を負うのは、当該労働者を使用することにより、法定労働時間を超えて当該労働者を労働させるに至った(すなわち、それぞれの法定外労働時間を発生させた)使用者です。
 具体的には、まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、次に所定外労働(所定労働日における所定外労働と、所定休日における労働時間)の発生順に所定外労働時間を通算することによって、労働時間の通算を行い、労基法が適用されます。
 なお、労基法第36条第6項第2号及び第3号に定める時間外労働の上限規制については、通算するべき所定外労働として、所定労働日における所定外労働と、所定休日における労働時間に加えて、自らの事業場の法定休日における労働時間についても、これらの全てを発生順に所定外労働時間として通算することによって労働時間の通算を行い、労働時間の上限規制を遵守する必要があります。
 整理すると、例えば、A事業場の使用者Aと先に労働契約を締結している労働者が、B事業場の使用者Bと新たに労働契約を締結して副業・兼業を行う場合の労働時間の通算の順序は、①、②、③の順となります。
 ① A事業場における所定労働時間
 ② B事業場における所定労働時間
 副業・兼業の開始前に、まずは①と②を通算します。通算の結果、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間(通常の労働時間制度の場合は1週40時間、1日8時間)を超える部分がある場合、この法定労働時間を超える部分は法定時間外労働となります。
 また、副業・兼業の開始後に、使用者Bは、この法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要があります。
 ③ A事業場における所定外労働時間又はB事業場における所定外労働時間(実際に行われた順に通算)
 使用者A及び使用者Bは、それぞれ、①と②の通算(所定労働時間の通算)の後、副業・兼業の開始後に、A事業場における所定外労働時間とB事業場における所定外労働時間を、所定外労働が行われる順に通算します。
 通算の結果、A事業場又はB事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合、それぞれの法定労働時間を超える部分はそれぞれ法定時間外労働となります。
 すなわち、A事業場では、「上記の通算の結果、A事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分」が法定時間外労働となり、B事業場では、「上記の通算の結果、B事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分」が法定時間外労働となります。
 そして、使用者A及び使用者Bは、それぞれ、この法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要があります。
 例えば、先に契約したA事業場(法定労働時間は週40時間)において週30時間、後に契約したB事業場(法定労働時間は週44時間)において週15時間の所定労働時間がある場合において、労働者がA事業場及びB事業場で労働契約のとおり労働した場合、1週間の労働時間は通算して45時間になりますが、A事業場においては、5時間が時間外労働(ただし、Aが時間外労働を行わせることにはなりませんので、使用者Aにおいて36協定の締結や割増賃金の支払は不要(所定労働時間のみであれば))、B事業場においては、1時間が時間外労働(Bが1時間の時間外労働を行わせることになりますので、使用者Bにおいて36協定の締結や割増賃金の支払が必要)となります。
 なお、更に所定外労働が発生した場合は、A事業場においては5時間の時間外労働の次に、B事業場においては1時間の時間外労働の次に、それぞれ、所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することとなります。
 詳しくは、以下の資料が参考になります。
副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A

2021.8.19医師の宿直義務の例外について教えてください。

 医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければなりませんが、当該病院の医師が当該病院に隣接した場所(注1)に待機する(患者の急変時に速やかに緊急治療を行えるよう、備えていることを指します)場合その他当該病院の入院患者の病状が急変した場合においても当該病院の医師が速やかに診療を行う体制が確保されている場として厚生労働省令で定める場合(病院の入院患者の病状が急変した場合においても当該病院の医師が速やかに診療を行う体制が確保されているものとして当該病院の管理者があらかじめ当該病院の所在地の都道府県知事に認められた場合⦅注2⦆)は、この限りではありません(但し、具体的な運用・解釈は自治体により異なりますので保健所等へご相談ください)。

(注1)隣接した場所とは、その場所が事実上当該病院の敷地と同一であると認められる場合であり、次の(ア)又は(イ)いずれかの場所を指します。
 (ア)同一敷地内にある施設(住居等)
 (イ)敷地外にあるが隣接した場所にある施設(医療機関に併設した老人保健施設等)
 ※ 公道等を挟んで隣接している場合も可。

(注2)「隣接した場所に待機する場合」に該当しない場合であっても、「速やかに診療を行う体制が確保されているもの」として当該病院の所在地の都道府県知事が認める際の具体的な基準については、以下のア~エを全て満たすものとされています。
 ア 入院患者の病状が急変した場合に、当該病院の看護師等があらかじめ定められた医師へ連絡をする体制が常時確保されていること。
 イ 入院患者の病状が急変した場合に、当該医師が当該病院からの連絡を常時受けられること。
 ウ 当該医師が速やかに当該病院に駆けつけられる場所にいること。
 (特別の事情があって、速やかに駆けつけられない場合においても、少なくとも速やかに電話等で看護師等に診療に関する適切な指示を出せること。)
 エ 当該医師が適切な診療が行える状態であること。
 (当該医師は適切な診療ができないおそれがある状態で診療を行ってはならない。)
 ※ なお、都道府県知事が認めた後に上記ア~エのいずれかの事項に変更があった場合は、再度都道府県知事の確認を要します。
第13回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料1-2 より)

2021.8.5今後、連携B・B・C-1・C-2水準の指定を申請することを予定していますが、これから医師の勤務実態の把握をするにあたり、①適切な労務管理の為に把握すべき事と、②労働時間の把握において留意すべき事について、簡単に教えてください。

 まず、①適切な労務管理の為に把握すべき事について、水準の検討、36協定の適切な締結も含めた労働基準法の遵守のために必要な項目として、例えば以下があります。
  • 主たる勤務先での労働時間
  • 副業・兼業先での労働時間(医師の自己申告で把握します)
  • 労働時間に該当する診療外業務の時間(研鑽、研究、教育等)
  • 「宿日直中」(主たる勤務先及び副業・兼業先を含む)の労働状況
  • 副業・兼業先の宿日直許可の有無
 また、休息の確保状況の把握のために必要な項目として、例えば以下があります。
  • 連続勤務時間
  • 勤務間インターバルの時間
 さらに、医師の労働時間短縮・勤務環境改善のために把握すべき項目として、例えば以下があります。
  • 休日(暦日で24 時間連続して勤務から解放されている日)の有無
  • 効率化や削減が可能な業務の時間
  • タスクシフト・タスクシェアが可能な業務の時間
 次に、②労働時間の把握において留意すべき事について、副業・兼業については、副業・兼業先の労働時間をあらかじめ把握する仕組みとするとともに、労働時間の実績を少なくとも月に1回は把握する仕組みがあるか、副業・兼業先の労働時間を含めた勤務計画となっているか、宿日直については、「宿日直許可のある宿日直」と「宿日直許可のない宿日直」とを区別して管理し、労働時間として正しい把握を行っているか、副業・兼業先の労働時間を含めた勤務計画となっている(副業・兼業先の宿日直許可の状況も把握し、時間を含めている)か、宿日直の時間の適切な取り扱いを行った上での勤務計画となっているか、研鑽については、医療機関において自己研鑽のルールを定めているか、労働ではない時間(主に自己研鑽)を把握することができるか、医師に対して、勤怠管理や当人が実施すべき内容(就業開始、退勤時刻の申告、時間外勤務の自己研鑽部分のルール確認等)について、少なくとも年に1回周知されているか、等があります。
こちらの資料が参考になります。

2021.7.26医療機関における宿日直許可の申請の流れについて教えてください。

 まず、申請前に以下をチェックします。

□ 申請を考えている宿日直中に従事する業務は、通常業務とは異なる、軽度又は短時間の業務である
□ 申請を考えている宿直業務は、夜間に十分な睡眠がとり得るものである
 □ ベッド・寝具など睡眠が可能な設備がある
□ 申請を考えている宿日直業務は、通常業務の延長ではなく、通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものである
 □ 始業・終業時刻に密着して行う短時間の業務態様ではない(4時間未満ではない)
□ 救急患者の診療等通常勤務と同態様の業務が発生することはあっても、稀である
□ 実際の宿日直勤務の状況が上記の通りであると医療機関内で認識が共有され、そのように運用されている(宿日直の従事者の認識も同様である)

 次に、労働基準監督署に、申請書(様式第10号)(原本2部)及び添付書類を提出します。
 申請対象である宿日直の勤務実態が、以下の条件を満たしていることを書面上で確認されます。
 対象業務は、
 ①通常の勤務時間から完全に解放された後のものであり
 ②宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限ること
 ③一般の宿日直の許可の条件(※)を満たしていること
 ④宿直の場合は十分な睡眠がとりうること等の条件を満たしていること
  (※)1.常態としてほとんど労働することがないこと
     2.通常の労働の継続ではないこと
     3.宿日直手当額が同種の業務に従事する労働者の1人1日平均額の3分の1以上であること
     4.宿日直の回数が、原則として宿直は週1回、日直は月1回以内であること
     5.宿直について相当の睡眠設備を設置していること
 そして、労働基準監督官による実地調査が行われます。
 宿日直業務に実際に従事する医師等へのヒアリングや、仮眠スペースの確認等を、原則として実地で行い、申請時に提出された書類の内容が事実に即したものかの確認が行われます。また、勤務実態の確認に必要な期間(個別の申請ごとに異なりますが、おおよそ直近数ヶ月間)の勤務記録の提出を求められます。
 書類審査、及び実地調査の結果、許可相当と認められた場合に宿日直許可がなされ、許可書が交付されます。
 (申請時に提出が必要な書類例)
宿日直当番表、宿日直日誌や急患日誌等、宿日直中に従事する業務内容、業務内容ごとの対応時間が分かる資料(電子カルテのログや急患日誌等を基に作成)、仮眠室等の待機場所が分かる図面及び写真、宿日直勤務者の賃金一覧表、宿日直手当の算出根拠がわかる就業規則等(※これらは標準的な例であり、実務上は監督官が調査に必要な範囲で提出を依頼)

こちらの資料が参考になります。

2021.6.15Q労働時間についてどのような管理が求められてますか。

労働時間管理については「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に詳細が記されており内容は以下のとおりとなっています。

使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することと
 「使用者」とは使用者から労働時間を管理する権限の委譲を受けた者を含む。
 「労働者」とは労働基準法第41条に定める者(管理監督者)及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業 場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除く全ての者をいう。
 また当ガイドラインが適用されない労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者におい
 て適正な労働時間管理を行う責務がある。

(1) 原則的な方法
・ 使用者が、自ら現認することにより確認すること
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録
 すること

(2) 例外的な方法(やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合)
・ 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づ
く措置等について、十分な説明を行うこと
・ 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著
しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること
・ 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならな
いこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを
守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること。

このように適正に把握された労働時間をもとに、過重労働や未払い賃金の防止に取り組むことが求められて
います。

2021.2.26労働時間・休憩・休日に関する規定が適用除外になる、「監督若しくは管理の地位にある者」(労働基準法第41条第2号)の判断基準について教えてください。

 監督若しくは管理の地位にある者(管理監督者)とは、一般的には部長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、名称にとらわれず、実態で判断すべきものであるとされます。
 そして、部長、役員といった役職だけではなく、以下の基準を満たす者でなければ、管理監督者として労働時間、休憩、休日の規定の適用除外とはならないとされます。
 ① 経営者と一体的な立場といえる職務内容とそれに伴う責任や権限を与えられていること(出勤、退勤についても厳格な制限を受けないこと)
 ② 管理監督者としてふさわしい待遇がなされていること
 ③ スタッフ職の場合、経営上の重要事項に関する企画立案などの部門に配属され、ラインの管理監督者と同格に位置付けられている。また、ふさわしい待遇を受けていること

2020.11.16医師、看護師等の宿日直許可基準について教えてください。

そもそも、使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間は、手待時間として労働時間とみなされるのが原則です。
しかし、労働密度がまばらであり、労働時間規制を適用しなくとも必ずしも労働者保護に欠けることのない一定の断続的労働に従事するものについて、労働基準法上、労働基準監督署長の許可を受けた場合に労働時間規制を適用除外しています。
これは、通常の労働者と比較して労働密度がまばらであり、労働時間、休憩、休日の規定を適用しなくても、必ずしも労働者保護に欠けるところがないので、労働時間規制が適用除外となっています。但し、緊急の対応等を行った場合は、その時間は労働時間とされます。
そして、「断続的労働」の一態様である「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」については、所定労働時間外又は休日における勤務であって、労働者の本来の業務は処理せず、構内巡視、文書・電話の収受又は非常事態に備えて待機するもので、常態としてほとんど労働する必要のない勤務が許可の対象とされているところ(後述の※「一般的な」宿日直許可の基準(参考)を参照してください)ですが、医療法第16条の規定により「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」とされている関係から、医師・看護師等の本来業務であっても特定の軽易な業務については、宿日直勤務中に処理しても差し支えないこととなっています。
詳しくは、以下の二つの通達をご確認ください。
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/5197674079eafb4e58810452e558f34d91450005.pdf

https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/49fa4a893745eb8515bd9d3d3786ed6794314276.pdf

※「一般的な」宿日直許可の基準(参考)
一 勤務の態様
イ 常態として、ほとんど労働をする必要がない勤務のみを認めるものであり、定時巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可するものであること。
ロ 原則として、通常の労働の継続は許可しないこと。したがって、始業又は終業時刻に密着した時間帯に、顧客からの電話の収受又は盗難・火災防止を行うものについては、許可しないものであること。
二 宿日直手当
宿日又は日直の勤務に対して、相当の手当が支給されることを要し、具体的には、次の基準によること
イ 宿直勤務一回についての宿直手当(深夜割増賃金を含む。)又は日直勤務一回についての日直手当の最低額は、当該事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われる賃金(法第三十七条の割増賃金の基礎となる賃金に限る。)の一人一日平均額の三分の一を下らないものであること。ただし、同一企業に属する数個の事業場について、一律の基準により宿直又は日直の手当額を定める必要がある場合には、当該事業場の属する企業の全事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者について一人一日平均額によることができるものであること。
ロ 宿直又は日直勤務の時間が通常の宿直又は日直の時間に比して著しく短いものその他所轄労働基準監督署長が右イの基準によることが著しく困難又は不適当と認めたものについては、その基準にかかわらず許可することができること。
三 宿日直の回数
許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については、宿直勤務については週一回、日直勤務については月一回を限度とすること。ただし、当該事業場に勤務する18歳以上の者で法律上宿直又は日直を行いうるすべての者に宿直又は日直をさせてもなお不足でありかつ勤務の労働密度が薄い場合には、宿直又は日直業務の実態に応じて、週一回を超える宿直、月一回を超える日直についても許可して差し支えないこと。
四 その他
宿直業務については、相当の睡眠設備の設置を条件とするものであること。

2020.9.25ワーク・ライフ・バランスの実現のためには、労使の自主的な取組が重要とされていますが、その取組を進めるための具体的な手法等が示されている「労働時間等見直しガイドライン」の内容を端的に教えてください。

 端的に申し上げますと、まず、取組体制を整備するポイントとして、①労働時間等の実態を時間当たりの業務負担の度合いなども含めて把握し、②労使が話し合う機会を整え、③個別の要望・苦情に対応できる体制をつくり、④業務を見直し、⑤取組計画を作成して取組むことが挙げられます。
 そして、一般的な取組メニューとして、①多様な事情や業務の態様に対応した労働時間制度(変形労働時間性等)、②年次有給休暇を取得しやすい環境の整備(年次有給休暇を取得しやすい雰囲気づくり・年次有給休暇の計画的付与・取得率の目標設定の検討・長期休暇の取得促進・時間単位の年次有給休暇制度の活用等)、③時間外・休日労働の削減(労働時間に関する意識改革・「ノー残業デー」「ノー残業ウィーク」の導入や拡充等)、④労働時間管理の適正化、⑤多様な正社員、ワークシェアリング、テレワーク等、⑥勤務間インターバル等があります。
 また、労働者の個別の事情に配慮した労働時間等の設定を改善するための取組として、①心身の健康保持に配慮する必要がある労働者(メンタルヘルスケアの実施等)、②育児介護をする労働者(男性が育児等に参加しやすい環境を作る等)、③妊娠中や出産後の女性労働者(妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)、④公民権の行使・公の職務の執行をする労働者(公民権の行使・公の職務の執行のための休暇制度等)、⑤単身赴任・自己啓発・地域活動を行う労働者(始・終業時刻の繰上げ・繰下げ等)などがあります。
 こちらの周知・広報用パンフレットが参考になりますのでご確認いただければと思います(https://www.mhlw.go.jp/content/000555909.pdf)。

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