1.採用選考は、応募者の基本的人権を尊重し、また応募者の適性、能力のみを基準として行わなければなりません。そのため、家族状況や生活環境など、応募者の適性、能力に関係のない事柄について、エントリーシートに記入させたり、面接で質問することは禁じられています。具体的には、下記項目が禁止事項となります。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
2.次に、「応募者の病歴や健康状態(既往歴)」についてですが、採用面接における質問の禁止事項にはあたりません。しかし、応募者の過去の病歴や健康状態(既往歴)について、面接で質問をすることや採用合否の基準として用いることが一般的に許容されるのは「業務に必要な範囲に限定する」場合に限られます。業務に必要な範囲を超えて、過去の病歴や健康状態(既往歴)や、感染しない病気について質問することは禁止されています。HIVやB型・C型肝炎などの感染情報についても、業務に影響しない場合は個人情報を取得すべきではない、というのが一般的な考え方です。
業務遂行可否や業務遂行上のリスクを把握するために必要な質問であることを応募者に伝え、本人の同意を得た上で病歴を聞く、といった場合は問題ないと考えられますが、利用目的は採用選考に限定し、その旨も応募者に伝える必要があります。非常にナイーブな問題で、かつ応募者のプライバシーにも関わりますから、質問の意図を応募者に丁寧に説明し、いきなり口頭で聞くのではなく、チェックシートを活用するなどして、応募者に不快な思いをさせないよう配慮した方がよいでしょう。なお、取得した個人情報は、必要最小限の人事採用関係者のみ閲覧を許可する、パスワードを設定する、プリンタ出力やデータの持ち出しを不可にするなど、厳重な管理体制を整えることが求められます。