副業・兼業の日数が多い場合や、自院と副業・兼業先の双方で所定外労働がある場合などにおいては、労働時間の申告等や労働時間の通算管理において、労使双方の手続上の負荷が高くなることが考えられます。
管理モデルは、そのような場合等において、労使双方の手続上の負荷を軽くしながら、労働基準法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる方法で、具体的な方法は以下のとおりです。
① 副業・兼業の開始前に、
(A)当該副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者(以下「使用者A」といいます。)の事業場における法定外労働時間
(B)時間的に後から労働契約を締結した使用者(以下「使用者B」といいます。)の事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)
を合計した時間数が時間外労働の上限規制である単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内(医師は2024年3月31日まで上限規制は適用されず、それ以降の取扱いは今後省令で定めることとされています)において、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定する。
② 副業・兼業の開始後は、各々の使用者が①で設定した労働時間の上限の範囲内で労働させる。
③ 使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払う。
これにより、使用者Aと使用者Bは、副業・兼業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、他の使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく労働基準法を遵守することが可能となります。
管理モデルにおける労働時間の通算の順序は、労働時間の通算の原則的な順序と異なり、
① A事業場における所定労働時間+A事業場における所定外労働時間(A法定内所定外労働時間・A法定外所定外労働時間)の上限
② B事業場における労働時間(B所定労働時間+B所定外労働時間)の上限
となります。
なお、A事業場において、所定労働時間と所定外労働時間を合計しても法定外労働時間が発生しないような場合に管理モデルを利用する場合であって、B事業場において、
・ 使用者Bが、副業・兼業を行う労働者のA事業場における日ごとの労働時間を把握しており、
・ A事業場における日ごとの労働時間とB事業場における労働時間を通算しても法定労働時間の枠に収まる部分が明確となっている
場合には、使用者Bは、その通算して法定労働時間内に収まる部分の労働時間について、割増賃金を支払わないこととすることは差し支えありません。
詳しくは、以下の資料が参考になります。
(副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説)
(「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A)